国立国際美術館アーティスト
木村忠太、津高和一、中原浩大、正延正俊、李禹煥、ヴォルフガング・ティルマンス、エミリー・カーメ・ウングワレー、サイ・トゥオンブリ―、ピエロ・マンゾーニ、池田龍雄、池田満寿夫、瑛九、須藤由希子、浜口陽三、不動茂弥、町田久美、南桂子、山本容子、ジョナサン・ボロフスキー、荒川修作、狗巻賢二、沢井曜子、高柳恵里、辰野登恵子、中村一美、山田正亮、アグネス・マーチン、ゲルハルト・リヒター、ブライス・マーデン、ベルナール・フリズ、植松奎二、宮崎豊治、湯原和夫、岡崎和郎、菊畑茂久馬、桑山忠明、佐野ぬい、 嶋田しづ、竹崎和征、谷川晃一、奈良原一高、野見山暁治、野村仁、福岡道雄、舟越桂、三島喜美代、イリヤ・カバコフ、クリスチャン・ボルタンスキー、クリスト、スーザン・ローゼンバーグ、パナマレンコ、フランク・ステラ、リチャード・セラ
一枚の絵は一本の線を引くことから始まります。線にはいろいろな種類があります。直線、曲線、点線、波線。描く材料によっても線の表情はさまざまに変化します。鉛筆やペンが生み出す細く尖った線。木炭やチョークの太く軟らかい線。また、伝統的な東洋画では線に作者の人格が表れ出るものとされてきました。
線描画は、かつては完成作のための習作や下絵として描かれ、対象の形態を明確に輪郭づけるためのデッサンとしての役割を担ってきました。線は世の中のあらゆる存在を分節化し描き分けることで、各々を意味の世界へと定着させるための手段でした。その際、現実には存在しない輪郭線という抽象的な概念が絵画の基盤となりました。
一方、近代に入ると、線表現そのものに独立した価値が見いだされ、20世紀以降に誕生した抽象絵画では、線そのものが有している造形性に注目が集まるようになっていきます。画家たちは新しい線の創出を目指し、線はかつてない多様な表情と表現性を具えていったのです。こうして、線は絵画の原点であると同時に、今なおその表現領域を拡大し続ける、古くて新しいテーマとなっていきました。
本展覧会は、当館の所蔵品の中から版画・素描を中心に、絵画、彫刻、写真を加えた約150点を選び、現代美術における線表現の多様性を紹介します。日頃、意識することの少ない線という存在が、私たちの視覚にどのような作用を及ぼすのか、その興味深い検証の場となることでしょう。