2015年に福岡で始まった「ART FAIR ASIA FUKUOKA(AFAF)」は、日本とアジアのアートシーンを結ぶフェアとして歩みを続け、今年で10回目の開催を迎えた。アートを通じて人や文化が行き交い、街全体が活気づく3日間は、もはや福岡の秋の風物詩といえるフェア。会場はマリンメッセ福岡B館。広大な展示空間に、国内外数多くのギャラリーと特別ブースがずらりと並ぶ。今年は新セクション「Moment」と「Infinity」が加わり、ライブパフォーマンスや大型インスタレーションなど、体験型の展示も充実。これまで以上にダイナミックで没入感あるアートフェアとなっている。
AFAF2025は、商業ギャラリーや特別企画ブースに加え、ライブパフォーマンスや大型インスタレーションまで、多彩なプログラムが同時に展開されている。近年、アジアの玄関口として発展してきた福岡で、国内外のギャラリーやコレクター、アートファンが集い、会場は熱気に満ちている。人と文化が行き交う福岡だからこそ、AFAFでは濃密なアート体験が楽しめる。ここからは、今年のAFAFを象徴する注目セクションを紹介する。
アジアを代表する作家を紹介する「Leading Asia」では、スペシャルアドバイザー宮津大輔によるキュレーションブースが展開されている。 今年のテーマは「Soaring!(飛翔)」。福岡のアーティスト・イン・レジデンスやFaN Weekで経験を積んだ作家たちが、さらにスケールアップして再び集結している。
出展作家のひとり、イ・ビョンチャンは、韓国の現代美術シーンで注目されるアーティストだ。産業廃材や日用品といった素材を使い、社会の断片や記憶を再構成するインスタレーション作品を手がける。会場では《TAL_2025 Whispering Words Consume Me, Will I Still Be Myself》が出現する。
また、クリスタル・ルパは、タイを拠点に活動する若手作家で、植物や身体、時間のモチーフを用いた緻密なドローイングや映像作品で知られる。繊細な線と柔らかな色彩で、自然と人間の関係性を問いかける作品を展開している。 アジアの若手作家たちの勢いと多様な視点を体感できる、まさに“いま”を切り取るセクションだ。
毎年AFAFの象徴となる「Feature」ブースは、アジアおよび福岡で活躍するアーティストに焦点を当てる特別ブース。 今年は、タイ・チェンライ在住のブスイ・アジョウと、福岡市美術館「福岡アートアワード」で市長賞を受賞した牛島智子の作品が選ばれた。
ブスイ・アジョウは、山岳民族としてのルーツと現代的な視点を融合させた作品で知られ、今年のフェアキービジュアルにも作品が採用されている。会場では、インスタレーション作品《Flower garden》を出展し、訪れる人々を物語的な空間へと誘う。
牛島智子は、福岡を拠点に活動するアーティストで、今年も新作《回転するgigi》を展示。フェアの象徴として来場者の目を引いている。
「Masters」ブースでは、14億のピカソの作品《女性の頭》やウォーホルの《Campbell’s Soup II》シリーズといった、20世紀美術を象徴する名作が並ぶ。 さらに、黒田清輝、横山大観、ベルナール・ビュッフェなど日本近代や戦後美術の巨匠の作品も展示販売されており、初心者からコレクターまで楽しめるラインナップだ。 美術館さながらの空間で、歴史的価値と市場価値をあわせ持つ作品に出会える貴重な機会となるだろう。
AFAFでは、福岡や九州の地元ギャラリーの出展にも力を入れている。今年は、福岡のギャラリーEUREKAも参加。EUREKAは牛島智子の作品を長く取り扱ってきたギャラリーで、今回の出展はその縁から始まったという。さらに、本フェアで紹介したいと考えていた現代アーティストのチョン・ユギョンにも声をかけたところ「ぜひ出展したい」と返答があり、今回の出展が実現した。
現地のアーティストやギャラリストの活動が紹介されることで、地域の文化的な厚みを体感できるのもAFAFの魅力だ。学生や社会人がボランティアとして運営に参加しており、フェア全体に福岡らしい温かい空気が生まれている。
AFAF2025は、アジアのアートシーンを見渡しながら、福岡の街のエネルギーと多様性を映し出すフェアだ。 美術館級の名作から最新の表現までが揃い、福岡の街がアートで満たされる。