東京都現代美術館ではこのたび、シンガポールを拠点に活動するアーティスト、ホー・ツーニェンの個展を開催します。ホー・ツーニェンは、東南アジアの歴史的な出来事、思想、個人または集団的な主体性や文化的アイデンティティに独自の視点から切り込む映像やヴィデオ・インスタレーション、パフォーマンスを制作してきました。既存の映像、映画、アーカイブ資料などから引用した素材を再編したイメージとスクリプトは、東南アジアの地政学を織りなす力学や歴史的言説の複層性を抽象的かつ想起的に描き出します。そのようなホーの作品は、これまでに世界各地の文化組織、ビエンナーレなどで展示され、演劇祭や映画祭でも取り上げられてきました。国内でも、当館で開催した「他人の時間」展(2015年)を含めた多くの展覧会に参加し、近年は国際舞台芸術ミーティング in 横浜(2018年、2020年)、あいちトリエンナーレ2019(2019年)、山口情報芸術センター[YCAM](2021年)、豊田市美術館(2021年)で新たな作品を発表し話題を呼びました。
ホーの最新作で新たな展開ともいえる《T for Time》(邦題未定) (2023年)では、ホーが引用しアニメーション化した映像の断片が、アルゴリズムによって、時間の様々な側面とスケール—素粒子の時間から生命の寿命、宇宙における時間まで—を描き出すシークエンスに編成されます。それらが喚起する意味や感覚は、時間とは何か、そして私たちの時間の経験や想像に介在するものは何かを問いかけます。