鴨治晃次《静物》2003/2013 水、グラス、アルミニウム板 作家蔵、photo:Hans-WulfKunze

「鴨治晃次 展|不必要な物で全体が混乱しないように」

ワタリウム美術館
4月8日開始

アーティスト

鴨治晃次
本展は、現在もポーランドを拠点に活動を続け、今年90歳を迎える鴨治晃次(以下、鴨治)の日本で初めての展覧会です。1960年代から今日までに制作された約20点の絵画、9点の立体作品、80点のデッサン、3点のインスタレーションが展示され、鴨治の小回顧展としてポーランドのザヘンタ国立美術館とアダム・ミツキェヴィチ・インスティテュートによって企画されました。
鴨治は、画家・インスタレーション・オブジェ作家として、1960年代から今日までポーランドのアートシーンで活躍。鴨治の芸術的成果はポーランドの美術史とその文化遺産に永久に刻まれており、作品はポーランドの主要美術館で観ることが出来ます。鴨治の芸術のルーツは現代美術の伝統(西洋とポーランドの戦後美術)と日本の伝統の双方にあります。

本展で展示されている初期の作品群は作家の制作活動の出発点を思い起こさせる重要なもので、鴨治が1967年から作品展示をしているワルシャワの伝説的なフォクサル・ギャラリー(1966年開廊)と深く関係しています。中でも《お寺の壁に》シリーズ(1963-1967)や《ラグーン》(1964-1967)などの、1960年代半ばに制作された《プルシュクフ絵画群》と呼ばれる彩色した板に穴を開けたレリーフのような絵画シリーズは、鴨治の作家活動の中でも非常に重要な存在で、これらの作品の特徴は素材のシンプルさであり、これは作家の他のすべての作品にも共通しています。

抽象絵画と中央に置かれた石のインスタレーション作品《二つの極》(1972年)は、日本の伝統に影響を受けています。作家の「適当」、つまり正しい線の位置、石の位置の探究の軸となるものであり、このインスタレーションはその長い探究の過程をまとめたものといえます。
また鴨治の作品では、しばしば私的な体験を想起させる要素がみられます。例えば1950年代末のポーランドへ向かう長期間にわたる船旅で体験した空間、空気、水に関連した要素が例に上がります。また、作品《佐々木の月》(1995)では友人の自死という悲劇的な出来事への回帰が作品として表現されています。
鴨治が大切にしているのは身の回りのものに対する姿勢です。それは小さなもの、記憶、物語から生まれる《静物》(2003年)でも表現されています。

鴨治が数年かけて制作した一連の《デッサン》(2011-2015)では、一貫して紙と筆と墨と白い絵具だけを使った最もシンプルな方法と形を追求しています。その制作技法は墨という伝統的な画材だけでなくヨーロッパの抽象画の起源や、芸術における精神性の探究にも言及しています。制作の反復、徹底した集中力、ミニマリズムといった霊的な側面も見ることができます。作品は作家の生活や物事、世界の本質に触れたいという願望から生まれたものであり、空間の無限性・水の性質・空気を表現しようとする象徴的表現への取り組みが見られます。これは自然の本質を直感的に理解しようとする試みであると言えます。

また穴の空いた和紙で構成されたインスタレーション《通り風》(1975年)も時空を表現します。それは時間の経過を意味し、私たちが永久にさらされ続ける過程を指します。内なる鍛錬と直感によって、鴨治は半世紀以上にわたって人生と共にある芸術、そして切り離すことのできない精神的な経験とを一つに結びつけてきました。自らのルーツである日本、現代美術への深い造詣、そして芸術的自己認識といった様々な文化の交差点で制作活動をしてきました。鴨治は世界的な芸術家であり、その芸術は普遍的な次元に到達しているといって過言ではないでしょう。今回のワタリウム美術館での小回顧展は作家へのオマージュでもあると言えます。

スケジュール

2025年4月8日(火)~2025年6月22日(日)

開館情報

時間
11:0019:00
休館日
月曜日
5月5日は開館
入場料一般 1500円、学生(25歳以下)・高校生・70歳以上・障がい者手帳提示と付き添い1名 1300円、中学生・小学生 500円
会場ワタリウム美術館
http://www.watarium.co.jp/
住所〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-7-6
アクセス東京メトロ銀座線外苑前駅3番出口より徒歩5分、東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A2出口より徒歩8分
電話番号03-3402-3001