佐喜眞美術館アーティスト
丸木位里、丸木俊、内田あぐり、木下晋、金城実、オサム・ジェームス・中川、丸木スマ
常設展示として通常は5~7点の連作「沖縄戦の図」の全14部を展示しました。
他に、鉛筆画の第一人者と称される木下晋作品を4点、5月18日の日本経済新聞夕刊「日本画と和紙の100年 紙漉き職人と画家たちの協働」でも紹介された内田あぐり《深い河-在》など迫力ある28点の作品群です。
広島に原爆が投下され、人類が初めて体験した核兵器の凄絶さを三十年以上にわたり《原爆の図》全15部に描き続けた丸木位里(1901-1995)、丸木俊(1912-2000)。位里81歳、俊70歳の晩年になって取り組んだのが地上戦を体験した沖縄戦です。 6年の歳月をかけて制作された《沖縄戦の図》14部は、山脈のようなふたりの画業の集大成となりました。
《沖縄戦の図》の連作は、沖縄の人びとが丸木夫妻の前で証言をし、モデルになり、沖縄の「現場」で描かれました。「地上戦を知らない私たちは沖縄の人たちから学ばなければならない」と丸木夫妻は、慶良間諸島、沖縄島、久米島、伊江島とそれぞれの現場と人びとを精力的に訪ね歩きました。
「沖縄はどう考えても今度の戦争で一番大変なことがおこっとる。原爆をかき、南京大虐殺をかき、アウシュビッツをかいたが、沖縄を描くことが一番戦争を描いたことになる」(位里)、「これは私達と沖縄の人たちとの共同制作です」「戦争というものを、簡単に考えてはいけないのです。日本が負けた、アメリカが勝ったということではなく、一番大事なことがかくされて来た、このことを知り深く掘り下げて考えていかなければなりません」(俊)
《沖縄戦の図》には、丸木夫妻の「人間といのち」への深い鎮魂と地上戦を生き延びた人びとの、どんなことがあっても生きなさい、という「命どぅ宝(ヌチドゥタカラ、命こそ宝)」への決意が込められています。
戦後80年。この貴重な機会にぜひご鑑賞いただければ幸いです。