東京オペラシティ アートギャラリー難波田龍起(1905-1997)は、戦前から画業を始め、戦後はわが国における抽象絵画のパイオニアとして大きな足跡を残しました。大正末期に詩と哲学に関心をもつ青年として高村光太郎と出会い、その薫陶を受けるなかで画家を志した難波田は、身近な風景やいにしえの時代への憧れを描くことで画業を開始します。
戦後になると抽象へと大きく制作を進め、海外から流入する最新の動向を咀嚼しながらも情報に流されず、特定の運動に属することもなく、独自の道を歩みました。その作品は、わが国における抽象絵画のひとつの到達点として高く評価されています。
東京オペラシティアートギャラリー収蔵品の寄贈者である寺田小太郎氏が本格的な蒐集活動にのりだし、さらにコレクションを導くコンセプトのひとつである「東洋的抽象」を立てたのも、孤高の画家難波田龍起の作品との出会いがきっかけでした。難波田が当館の所蔵する寺田コレクションの中心作家となっていることは言うまでもありません。
本展は難波田龍起の生誕 120 年を機に、当館収蔵品はもとより、国内の美術館の所蔵品、また個人蔵の作品などもまじえ、難波田の画業の全貌を四半世紀ぶりに紹介し、今日的な視点から検証するものです。