MOMENT Contemporary Art Center MOMENT Contemporary Art Centerでは、2025年7月25日(金)から10月5日(日)にかけて土田ヒロミ、ヤノベケンジ、栗林隆によるグループ展「不可視への眼差し / Rays out of Sight - Art and Radiation, A visual chronology since 1945」を開催いたします。本展では、原爆投下から80年となる今年、1945年以降被爆国としての歴史を持つ日本において、アーティストたちが放射線という主題にいかに向き合い、その影響をどのようなかたちで表現してきたのかをご紹介します。 1939年生まれの土田ヒロミは、1960年代に写真家として活動をはじめて以降、一貫して戦後日本の民族性、精神性の表象に焦点をあてた作品を発表してきました。本展では、土田の代表的なシリーズとしても知られる、被爆体験者の作文集『原爆の子』(長田新編、岩波書店、1951年)に寄せた、彼らの33年後の「現在」を写したポートレイト〈ヒロシマ1945-1979〉(1979)、爆心地の被爆の痕跡を残す風景を定点撮影した〈ヒロシマ・モニュメント〉(1979-)、そして広島平和記念資料館におさめられている遺品などを撮影した〈ヒロシマ・コレクション〉(1981-)からなる「ヒロシマ三部作」を展示します。 ヤノベケンジ(1965-)は1990年代より「現代社会におけるサヴァイバル」をテーマに、近未来的な想像力をもとに、機能性のある彫刻作品を制作してきました。特に、放射線を“感知”する機能を備え、内部被ばくを防ぐ自作の《アトムスーツ》を着用して、原発事故後のチェルノブイリ原発や周辺地域などを探訪する《アトムスーツ・プロジェクト》(-2003)は彼の代表的なプロジェクトのひとつです。本展では、このプロジェクトに含まれる写真作品であり、21世紀以降のヤノベの新たなテーマ「リヴァイバル(=復活・再生)」を象徴する作品制作のきっかけにもなった《アトムスーツ・プロジェクト:保育園4・チェルノブイリ》(1997/2001)および関連のドローイング作品を展示します。 栗林隆(1968-)は、自然、人間、土地などあらゆるもの同士に存在する境界線をテーマに、大型インスタレーションやドローイング、映像等さまざまなメディアを用いて作品を制作しています。また、栗林は2011年に発生した福島第一原発事故以前からエネルギー問題に関心を寄せ、東日本大震災以降は福島へ足を運びながら、原発問題を下敷きとする作品を多く発表してきました。本展では、震災10年目となる節目に下山芸術の森発電所美術館(富山県)にて初号基を発表したスチームサウナ式のインスタレーション《元気炉》シリーズから、新作を奈良にて制作・発表します。 今なお人間へ脅威と恩恵をもたらす不可視のエネルギーに対し、私たちはその経験や記憶をどのように語ることができるでしょうか。本展では3人の作家の表現を通じて、過去から現在、そして未来へ続くタイムラインをたどります。
#写真 #彫刻・立体 #インスタレーション #戦後80年