サイトウミュージアムは、精神科医である齋藤洋一が作品の美しさはもとより作家の制作に傾けるひたむきさや、さらには作家の独創性をも拠り所として収集した作品群からなります。先入観にとらわれることなく集められた作品の中には、これまでの美術史の主流からこぼれ落ちてしまった作品も数多く含まれます。そのような作品を分け隔てなく丁寧に拾い上げ、日本はもとより海外を含めて豊かな近現代美術の再評価を試みることをミュージアムの使命のひとつとしています。
松阪の地は伊勢神宮へと通じる街道沿いの町として全国各地の人々が訪れました。情報や物資が集積することでこの地は栄え、一方で地場産業として江戸時代に生まれた松阪木綿(伊勢木綿)は江戸を中心に全国へともたらされました。経済的に豊かになったこの地方には、絵師や文化人が頻回に訪れ、経済活動の両輪として文化的素養が重要視される土壌がはぐくまれました。
現在、松阪の地にはこの地の古墳時代等を紹介する松阪市文化財センターはにわ館や、江戸期の国学者を紹介する本居宣長記念館、松阪商人の旧長谷川治郎兵衛家に旧小津清左衛門家、そして北海道の名付け親である松浦武四郎記念館などがあります。各時代の様々な分野の文化を紹介するこうした施設の中にあって、サイトウミュージアムは主に近代から現代にいたる美術を、内外を問わずに紹介・発信することで過去と現在、松阪と世界とをつなぐ橋渡し的な存在となることを目指します。