展覧会キーヴィジュアル
今年2月に全館オープンを果たした横浜美術館。リニューアルオープン記念展の最後を締めくくる展覧会「いつもとなりにいるから 日本と韓国、アートの80年」の詳細が発表された。会期は12月6日~2026年3月22日。
本展は、地理的にも文化的にも近しい他者である日本と韓国の関係性を、両国のアートを通じて新しく発見することを試みる展覧会。1965年の日韓国交正常化から60年となる節目に合わせ、韓国の国立現代美術館との約3年間のリサーチと準備期間を経て開催される。

展覧会のステートメントには、本展のテーマについて次のように記されている。
あるものの特徴をよく理解するためには、別のものと比べてみる、というとてもシンプルな方法があります。アートを理解する時にも、この方法は有効です。「いつもとなりにいるから」、刺激を与えあったり、時にぎくしゃくしたり――歴史的なわだかまりや政治的なまさつを、簡単にのり越えることはできません。けれども、アートを入口に「おとなりさん」のことを考え、わたしたち自身を見つめ直すことは、これから先もともに生きるための、勇気やヒントを得ることに繋がるはずです。

この80年間で、日本による植民地支配からの解放、冷戦と朝鮮戦争、そして民主化を経験した韓国は、ドラマや映画、音楽、ファッションをはじめとするKカルチャーの世界的流行も重なり、ますます私たちにとって身近になった。本展は、そんな近くて遠い「おとなりさん」との知られざる関係に、改めて迫るような機会となる。
展覧会は全部で5章立て。韓国の国立現代美術館の所蔵品から来日する優品19点や、本展のための新作を含む、約160点の作品を通じて、1945年以降の日韓美術の関係性をひもといていく。
1章「はざまに―在日コリアンの視点」では、1945年の日本の敗戦から日本と大韓民国の国交が正常化する1965年までの約20年間を、日本と朝鮮半島の「はざま」にいた在日コリアンを軸にたどる。両国に正式な国交が結ばれていない時期が続いた「国交の空白期」をテーマとした2010年代以降の日韓両国の作品も展示することで、同時期を振り返るようなセクションとなる。

2章「ナムジュン・パイクと日本のアーティスト」では、世界的なヴィデオ・アーティストであるナムジュン・パイク(白南準)を中心に、日韓のアーティストたちのつながりを紹介する。パイクは日本の植民地時代の朝鮮半島に生まれ、1950年に来日。生涯にわたって日本のアーティストやクリエイターたちと親交を結んでいた。

1965年に、大韓民国とのみ正式に国交を樹立した日本。3章「ひろがった道 日韓国交正常化以後」では、ようやく公式な人や物の移動が可能になった両国が、互いに相手の国のアートを紹介するようになった様子を見ることができる。

4章「あたらしい世代、あたらしい関係」では、ソウルの名門弘益大学で美術を学んだ中村政人と、同都市で開催された村上隆とのふたり展「中村と村上展」(1992年)に焦点を当てる。また、中村が渡韓した90年代は、現在韓国のリウム美術館で大規模回顧展が開催されているイ・ブルらをはじめとする、新しいメディアを活用した作家の登場した時代でもあった。

5章「ともに生きる」は、1987年まで続いた韓国の軍事独裁政権の中、同国で民主化に連帯するアート作品が国境を超えて生み出されていた様子が映し出される。このようなアートと社会の問題をつなぐ意識は、現在のアーティストにも受け継がれており、現在、そして未来を「ともに生きる」ための気づきを、作品からみつけてほしいという思いが込められたセクションになる。

本展は横浜で開催後、2026年5月から国立現代美術館果川でも開催予定。戦後80周年でもある本年の最後を飾るにふさわしい展覧会がまもなく開幕する。