公開日:2025年5月14日

大阪に国内外63のギャラリーが集う、「ART OSAKA 2025」が6月開催。新企画の映像プログラムも

会場は、重要文化財である大阪市中央公会堂と、近代化産業遺産のクリエイティブセンター大阪。会期は6月5日から9日まで

重要文化財の近代建築と現代美術作品のコラボレーション

現代美術に特化したアートフェア「ART OSAKA 2025」が、6月6日〜8日に大阪・中之島の大阪市中央公会堂、6月5日〜9日に北加賀屋のクリエイティブセンター大阪(名村造船所大阪工場跡地)で開催される。

今年で23回目を迎える「ART OSAKA」。国の重要文化財である大阪市中央公会堂、近代化産業遺産に認定されているクリエイティブセンター大阪という2会場を舞台に、大阪を代表する近代建築の壮麗なホールと現代美術作品とのコラボレーション、インダストリアルな巨大空間を活用した大型作品やインスタレーション展示など、空間と共鳴するプレゼンテーションが見どころのひとつだ。

大阪市中央公会堂
クリエイティブセンター大阪(名村造船所大阪工場跡地)

フェアは、個々に出展するブース形式の「Galleriesセクション」(会場:大阪市中央公会堂 3階)と、大型作品・インスタレーションに特化した「Expandedセクション」(会場:クリエイティブセンター大阪)で構成され、合わせて63のギャラリーが参加。

「Galleriesセクション」には、韓国や台湾からの参加も含む計44のギャラリーが一堂に会し、作品の展示・販売を行う。AISHO(東京)、EUKARYOTE(東京)をはじめ、「ART OSAKA」初出展となるギャラリーも並ぶ。

小池一馬 BC231109 陶器 2024 Courtesy of AISHO
菊池遼 void #166 Acrylic and oil on panel 2024 Courtesy of EUKARYOTE

造船所跡地の広大な空間を活用したサイトスペシフィックな展示

「Expandedセクション」には国内外19組のアーティストが出展。造船所跡地の広大な敷地の全エリアを使って、サイズの大きさだけでなく、メディアの垣根を越えた多様な作品が展開される。

1階の「ブラックチェンバー」には、オノ・ヨーコによる観客参加型のインスタレーション《Fly》を展示。4階の「ドラフティングルーム(製図室)」では伊藤航が名村造船所跡地にインスピレーションを受け、近代産業の象徴である「歯車」と「人」をモチーフに制作したインスタレーションが登場する。また髙橋穣は会場の赤鉄骨と対峙する巨大彫刻を展示するほか、今年から新たに会場に加わるライブスペース「スタジオパルティッタ」では、河合政之が刻一刻と変化する色やかたち、音を即興的に作り出す映像インスタレーションを発表する。

髙橋穣 装置 #1 Mixed media 2023 Courtesy of Marco Gallery
伊藤航 Control ケント紙、アクリル樹脂、桧、木ネジ、ウレタン塗装 2024 Courtesy of GALLERY KOGURE

60年代以降の日本の映像表現と、森村泰昌「テクノテラピー」を紹介する映像プログラム

さらに今年は、大阪市中央公会堂を全館使用し、新企画として大集会室でふたつの映像プログラム「〈うつること〉と〈見えること〉─映像表現をさぐる: 60年代から現在へ」と、「テクノテラピー」特別上映会を行う。

「〈うつること〉と〈見えること〉─映像表現をさぐる: 60年代から現在へ」は、批評家・キュレーターの梅津元のキュレーションにより、1960年代から現在に至る日本の映像表現を約25作品、4つのプログラム構成で紹介するもの。

出光真子、中谷芙美子、松本俊夫、山口勝弘らのインタビューを通して、日本の映像表現の黎明期をたどるドキュメンタリー『キカイデミルコトー日本のビデオアートの先駆者たち』が期間中、毎日上映されるほか、村岡三郎、河口龍夫、植松奎二の共作による《映像の映像-見ること》、柏原えつとむ《サタワル》、今回が初公開となる堀浩哉《READING Session No.3》、折笠良のアニメーション作品《みじめな奇蹟》、牧野貴《The Low Storm》など多彩な上映作品がラインアップされている。

「テクノテラピー」特別上映会は、大阪市中央公会堂の大規模な保存・再生工事を翌年に控えた1998年に森村泰昌のプロデュースで開催された、施設の全館を活用したアートプロジェクト「テクノテラビー」の記録映像を27年ぶりに同施設で上映する貴重な機会だ。

テクノテラピー Photo by Kazuo Fukunaga

国際シンポジウムやアーティストトークも開催

さらに「〈うつること〉と〈見えること〉─映像表現をさぐる: 60年代から現在へ」の関連イベントとして、6月7日には、ユランダ・ブレア(M+キュレーター)、孫松榮(台北芸術大学教授、映像学博士)、田坂博子(東京都写真美術館学芸員)らによる、日本やアジアの映像作品の歴史化を考える国際シンポジウム「うつる像/見える像-映像表現の在処」 が開催。

また6月7日の「テクノテラピー」特別上映会の上映後には、森村と金澤韻(現代美術キュレーター)によるスペシャルトークが行われ、当時の制作秘話やアートの現場について語られる。今回から始まる映像プログラムの充実したラインアップにも注目したい。

「ART OSAKA 2025」の出展ギャラリーや各プログラムの詳細は、公式サイトで確認してほしい。

「ART OSAKA 2025」

会期:2025年6月5日~9日

Galleriesセクション
会期:2025年6月6日~8日 ※6日は招待客、プレスのみ
会場:大阪市中央公会堂 3階

Expandedセクション
会期:2025年6月5日~9日
会場:クリエイティブセンター大阪

公式サイト:https://www.artosaka.jp/2025/

映像プログラム:「〈うつること〉と〈見えること〉─映像表現をさぐる: 60年代から現在へ」

6月6日14:30〜Aプログラム、Bプログラム
6月7日10:30〜Aプログラム、Cプログラム、Dプログラム
6月8日10:30-Aプログラム、Bプログラム、Cプログラム、Dプログラム

A:『キカイデミルコト―日本のビデオアートの先駆者たちー』(2013)

B:「映像の到来:実験映画、ビデオアート、現代美術」
飯村隆彦《くず》(1962)
萩原朔美《KIRI》(1972)
山崎博《HELIOGRAPHY》(1979)
松本正司《CYCLE》(1969)
柏原えつとむ《サタワル》(1971)
野村仁《カメラを手に持ち腕を回す》(1972)
中塚裕子+林剛+持田明美《THE COURT 天女の庭/テニスコート》(撮影年1983)
奧山順市《我が映画旋律》(1980)
河合政之《Video Feedback Aleatoric No.1》(2011)
瀧健太郎《序 prologue》(2004)

C:「表現の探索:美術家による映像」
村岡三郎・河口龍夫・植松奎二(共作)《映像の映像-見ること》(1973)
今井祝雄《円》(1967)
福岡道雄《男の美学》(1967-68)
堀浩哉《READING Session No.3》(1974)
森村泰昌《銃を持つ私/ウォーホルに捧げる》(1998)
松井智惠《HEIDI 46 ̶ brick house》 (2006)
白井美穂《The Creative Act》(2007)
藤本由紀夫《duet》(2021)

D:「来たるべき映像表現:越境性、批評性、再帰性」
折笠良《みじめな奇蹟》(日本語版)(2023)
鈴木了二《物質試行 43「CAHIERS|覚書」》(2001)
小松浩子《内包浸透現象》(2019)
金村修《Topless Beaver Drive》(2019)
石原友明《眼投げ。》(2022)
高嶋晋一+中川周《No experience necessary #1》(2022)
三宅砂織《Seascape(Suzu)2》(2024)
牧野貴《The Low Storm》(2009)
葉山嶺《The knot of meridian/子午線の結目》(2015)

シンポジウム 「うつる像/見える像-映像表現の在処」
日時:6月7日 15:20~18:00
会場:大阪市中央公会堂 1階 大集会室
※予約不要・参加無料
詳細はこちら:https://www.artosaka.jp/2025/jp/event/993/

映像プログラム:「テクノテラピー」特別上映会

日時:6月6日、7日
会場:大阪市中央公会堂 1階 大集会室

A:テクノテラピー スペシャルナイト 森村泰昌+多田正美
日時:6月6日18:30〜

B:『The Image of Techno Therapy』
日時:6月7日18:45〜
上映後スペシャルトーク20:00〜21:00

鑑賞料:各回1,000円 ※オンライン販売のみ

詳細はこちら:https://artosaka.jp/2025/jp/screening-program-2/

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