「新時代のヴィーナス!アール・デコ100年展」メインヴィジュアル
2025年からちょうど100年前のフランス・パリでは、「現代装飾美術・産業美術国際博覧会」、通称アール・デコ博が開催された。この博覧会から100年を記念する展覧会「新時代のヴィーナス!アール・デコ100年展」が、大阪中之島美術館で開催される。会期は10月4日から2026年1月4日まで。
本展では「アール・デコと女性」をテーマに据え、女性が描かれた、フランスを中心とするヨーロッパのグラフィックデザイン作品をはじめ、女性と関わりの深いジュエリー、香水瓶、ドレス、車など、100年前のこの時代を象徴する数々の作品や資料を展示。アール・デコの女性の表象とそのデザイン諸相の一端を展覧する。
展示は6章構成となり、前半はアール・デコ博覧会の関連作品や資料、ジュエリーに加え、宣伝広告に女性が登場した自動車や飛行機など交通手段にまつわるグラフィックデザインと当時のBMWのクラシックカー、アール・デコ時代の理想的な女性像“ヴィーナス”を象徴するグラフィックデザイン、ドレス、ジュエリー、香水瓶などを展示。
後半では、社会進出を果たし経済的な自立を果たした女性たちが、この時代に登場したレジャーを楽しむファッショナブルな姿、当時のスターであったムーラン・ルージュのミスタンゲットをはじめとする人気の女性俳優たちに光を当てる。さらに、同時代のジュエリーと当時アメリカで建設されたスカイスクレーパーの写真や映像から、国境やジャンルを超えたアール・デコ様式の広がりを紹介する。
BMW社のクラシックカーや、アール・デコ博覧会で実際に設置されていた噴水塔の一部《泉の精 ガラテ》、当時の新しい女性像を示す約100点におよぶポスターと並び、本展の見どころとなるのが、ブシュロンのアーカイヴジュエリーの展示だ。アール・デコ期のジュエリー26点が出展される予定となっている。
女性のヘアスタイルやドレスの丈がより自由になった1920年代に作られた、ダイヤモンドのタッセルをあしらったブラックシルクのロングネックレスや同時代に登場したビューティーケース(化粧道具入れ)、装飾性のあるジュエリーウォッチ、20世紀初頭に生まれ、アール・デコ期に広く人気を博した「ホワイトジュエリー(Joaillerie Blanche)」を代表するブローチをはじめ、磨き上げられた技巧と細部まで美しいブシュロンのジュエリーの数々を堪能できる。
今秋は複数の美術館でアール・デコにまつわる展覧会が予定されている。洗練された装飾美のみならず、100年前に描かれた理想の女性像に焦点を当てる本展は、その多面性に触れる貴重な機会となりそうだ。