公開日:2025年7月2日

ポップ・アートの巨匠クレス・オルデンバーグの回顧展が東京で29年ぶりに開催。個展「いろいろ」はPace 東京で7月開幕

会期は7⽉17⽇〜8⽉23⽇。⿇布台ヒルズ内にあるPaceギャラリーで開催

左から、クレス・オルデンバーグ《N.Y.C. Pretzel》(1994)、Geometric Mouse, Scale B (Red),(1971) © Claes Oldenburg Courtesy of Pace Gallery

日用品を巨大化させたユニークな彫刻などで知られるオルデンバーグの回顧展が開催

7月17日より、東京のPace ギャラリーにて、アメリカのポップ・アートの巨匠クレス・オルデンバーグの回顧展「いろいろ(Claes Oldenburg: This & That)」が開催される。

本展は、東京では1996年以来およそ29年ぶりとなる大規模な回顧展であり、1960年代から2000年代半ばにかけて制作された彫刻や版画、マルチプル作品を通じて、作家の創作の幅広さとユーモアに満ちた視点を紹介するものである。

クレス・オルデンバーグ Geometric Mouse, Scale C 1971 © Claes Oldenburg Courtesy of Pace Gallery

オルデンバーグは、1950年代末から1960年代初頭にかけてニューヨークで頭角を現し、日用品を巨大化・軟化させたユニークな彫刻作品や、ハプニング、パフォーマンスといった当時最先端の表現を通じて、美術と日常の境界を押し広げてきた。代表作に、紙くずや標識を模した《The Street》(1960)、架空の店を再現した《The Store》(1961)などがあり、こうした活動は彫刻というジャンルの枠組みを大きく揺るがすものだった。

クレス・オルデンバーグ Profiterole 1989-90 © Claes Oldenburg Courtesy of Pace Gallery

展覧会タイトル「いろいろ」は、日本語で「様々な」「雑多なもの」を意味する言葉であり、漢字にすれば「色々」と書くように、視覚的にも豊かさや多様性を感じさせる。本展では、そうした「いろいろ」な視点からオルデンバーグの作品にアプローチすることができる。日常の中に美や意味を見出し、凡庸なオブジェクトに命を吹き込んできた彼の姿勢が、改めて浮かび上がる構成となっている。

クレス・オルデンバーグ N.Y.C. Pretzel 1994  © Claes Oldenburg Courtesy of Pace Gallery

展示のハイライトのひとつは、段ボールで制作された《N.Y.C. Pretzel》(1994)のマルチプル作品を、会場入口に設置された自動販売機型のショーケースにて展示するインスタレーションである。

そのほかにも、《Wedding Souvenir》(1966)、《Profiterole》(1989〜90)、縫製キャンバスによる《Mouse Bags》(2007〜17)など、多様な素材を駆使したマルチプル作品約60点が出品される。

クレス・オルデンバーグ Geometric Mouse, Scale B (Red) 1971  © Claes Oldenburg Courtesy of Pace Gallery

大型作品では、アルミニウムやフォームなどで構成された鮮やかな黄色のトランペット《Tied Trumpet》(2004)、縫製された9つのパーツから成る《Miniature Soft Drum Set》(1969)などが登場。また、《Knife Ship 1:12》(2008)は、オルデンバーグと長年のコラボレーターであったコーシャ・ヴァン・ブリュッゲン、建築家フランク・ゲーリー、キュレーターのジェルマーノ・チェラントとの協働によって1985年のヴェネツィアで発表された伝説的なパフォーマンス《Il Corso del Coltello》に着想を得た作品であり、スイスアーミーナイフ型の船を1/12スケールで再構成している。

クレス・オルデンバーグ Knife Ship 1:12 2008  © Claes Oldenburg Courtesy of Pace Gallery

このほかにも、アルファベットをアイスキャンディーの形で描いた《Alphabet in Form of a Good Humor Bar》(1970)、アルファベットの「Q」を海辺の別荘に見立てた《The Letter Q as Beach House, with Sailboat》(1972)、季節ごとの《Apple Core》(1990)シリーズの版画など、豊かなイメージの変奏が紹介される。

クレス・オルデンバーグ Ice Cream Sundae on Tray 1962 © Claes Oldenburg Courtesy of Pace Gallery

オルデンバーグは、1970年の大阪万博アメリカ館で発表された《Giant Ice Bag》によって日本でも知られるようになった。1973年には東京・南画廊で初の個展を開催し、1996年の回顧展を経て、今回の展覧会が約半世紀ぶりの個展開催となる。現在も、東京ビッグサイトの屋外には《Saw, Sawing》(1995〜)が恒久設置されており、《Inverted Q》(1977–88)は横浜美術館に、《Tube Supported by Its Contents》(1983)は宇都宮美術館に所蔵されている。

本展は、PaceのCEOマーク・グリムシャーと、オルデンバーグの娘であり財団代表のマーチャ・オルデンバーグの共同キュレーション。Pace創立65周年を記念したプロジェクトの一環であり、またPaceがオルデンバーグ&ヴァン・ブリュッゲン財団のグローバル代表となって以降、初の大規模展覧会でもある。オルデンバーグの創作を、家族の視点とギャラリーの歴史が交錯するかたちで辿る本展は、アートと日常の関係を問い直す貴重な機会となるだろう。

Art Beat News

Art Beat News

Art Beat Newsでは、アート・デザインにまつわる国内外の重要なニュースをお伝えしていきます。