9月から編集部に参加している福島吏直子です。編集長も「福島」さんということで、Tokyo Art Beatの編集部にはふたりの福島がいます。覚えていただけたらうれしいです。普段はアート関連の記事を発信していますが、今日は少し趣向を変えて、最近心に残った映画を紹介したいと思います。
フェミニズムについて以前から興味はあったものの、まだしっかりと学べてはいません。だからこそ、私は本や映画、アートから少しずつその考え方を感じ取りながら、日々学んでいます。そんななかで、フェミニズムに少しでも関心のある方にぜひ観てほしいと思ったのが、10月25日に公開された映画『女性の休日』です。公開初日、イメージ・フォーラムの会場は満席。上映前からざわめきが広がり、会場にはこの作品を待ちわびていた人たちの期待が満ちていました。

ストーリーは、1975年10月24日のアイスランド。女性たちが一斉に仕事も家事も“お休み”する、そんな一日を描いたノンフィクションです。ただ“休む”という静かな行動が、やがて国を動かすほどの力になりました。いまのアイスランドがジェンダー平等の先進国であり続けることは、その日の延長線上にあるのかもしれません。
フェミニズムという言葉を聞くと、少し身構えてしまう人もいるかもしれません。けれど、『女性の休日』に登場する女性たちが起こしたアクションは、もっと日常に近い、やわらかな連帯のかたちでした。パワフルでありながら、知性とユーモアをもって行動し、まるで文化祭を楽しむようにこの日を迎えていた彼女たちの姿を見ていると、未来を少しだけ信じられる気がしました。誰かを糾弾するのではなく、楽しげに、軽やかに、“自分たちの生き方を選び取る”。そんな、やさしくて力強い記録です。
映画の中で特に印象的だったのは、ある女性のこの言葉。
「男性たちを愛してた。少し変わってほしかっただけ」
この一言に、私はハッとしました。相手を責めるでも、断ち切るでもなく、「もう少し分かり合いたかった」という、願い。その想いが、この映画の温度をつくっているように感じました。

『女性の休日』を観て、私は3つの作品を思い出しました。どれも、日常の中で少しずつ世界を変えていく女性たちの物語です。
ひとつめは、山内マリコの小説『あたしたちよくやってる』。誰かに褒められなくても、私たちは今日もちゃんとやってる。そう思わせてくれるあたたかさがあります。
ふたつめは、ブレイディみかこの『シスターフッド・エンパシー』。“共感でつながる強さ”を描いたエッセイで、フェミニズムをより日常の言葉でとらえ直せる一冊です。
そして最後は、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』。恋愛ドラマとしても楽しいけれど、「家事に名前をつけて価値を与える」ことで、小さな革命を起こした作品です。
『女性の休日』と同じように、どれも“やさしさの中にある強さ”を教えてくれる物語なので、併せて手にとってみてください。

明日すぐに大きな変化を起こせなくても、隣にいる誰かと気持ちを分かち合いながら、一歩ずつ進んでいけたらいい。そんな思いを胸に、今日も楽しく、パワフルに。それが、私なりの“女性の休日”の過ごし方かもしれません。
『女性の休日』
監督:パメラ・ホーガン
出演:ヴィグディス・フィンボガドッティル、グズルン・エルレンズドッティル、アウグスタ・ソルケルスドッティル 他
エンドクレジットソング:ビョーク
2024年/アイスランド・アメリカ/アイスランド語・英語/
原題:The Day Iceland Stood Still/71分
後援:アイスランド大使館
提供・配給:kinologue
© 2024 Other Noises and Krumma Films.
公式サイト:https://kinologue.com/wdayoff/