イヴ・マルシャン & ロマ・メッフル c803d74b-86ff-49a9-b633 3d83e9633402, Les Ruines de Paris 2024 © Yves Marchand & Romain Meffre
今年で第14回を迎える「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」が、2026年4月18日から5月17日に開催される。町家や寺院、歴史的建造物から現代建築まで、京都各地の空間を写真のために再解釈する独自のスタイルで知られ、2013年の創設以来高い評価を獲得してきた。2024年の来場者は約30万人、累計は210万人を超え、いまやアジアを代表する写真祭へと成長している。
今回のテーマは「EDGE(エッジ)」。分断や接触、移ろい、葛藤、そして未知へ踏み出す瞬間など、多義的な“縁”をめぐる思考を促すキーワードだ。京都の歴史建築や文化施設を舞台に、街全体が写真祭として立ち上がる「KYOTOGRAPHIE」らしい構成が展開される。
今年は日本、南アフリカ、フランス、ウルグアイ、パレスチナ、ケニアなど 8ヶ国13組が参加。各地域が抱える社会・歴史・身体性から、“エッジ”というテーマを異なる角度で描いていく。
森山大道が参加し、「写真はいつだって“際”にある」と語る彼の視線が、テーマの核心を鋭く突く。ノイズ、ブレ、ざらつき──境界に立つときに生まれる揺らぎをそのまま作品に定着させてきた森山の表現は、写真そのものが抱える“臨界点”を象徴している。

南アフリカのリンダ・スターリングは、社会の周縁で生きる女性たちの身体に宿る歴史と暴力、そして回復の過程を見つめる。「エッジに立つことで初めて自分の輪郭を知る」という彼女の言葉は、身体と社会が交わる現場を表す。

ケニアのダンディウェ・ムリウは、鮮烈な色彩とパターンで女性像を再構築する作家。今回は着物の要素も取り入れ、日本とアフリカの視覚文化を交差させている。

柴田早理は、自然と身体のあいだに立ち上がる微細な気配を追い、環境と人間の境界が揺れる瞬間をとらえる。フランス・シャンパーニュ地方での撮影を経て、土地の光や空気に反応する身体のあり方を見つめ、その“曖昧な間”に潜む感覚を可視化している。

フランスからはイヴ・マルシャン & ロマ・メッフルが参加し、都市が“繁栄と崩壊のあいだ”で見せる緊張を静かに捉える。無人の建築に残された時間の痕跡や、崩れゆく構造物の質感を丁寧に写し取る彼らの視線は、都市が抱える境界の揺らぎを鋭く可視化し、今回のテーマ「EDGE」と強く響き合う。

「KYOTOGRAPHIE」と並行して開催されるサテライトフェスティバル「KG+2026」では、京都市内 141会場で164の展覧会 が行われ、21カ国から442名 が参加。新進作家を発掘する国際公募プログラムとして2013年に始まり、街を歩きながら才能と出会える“もうひとつの写真祭”として定着している。
また、共同創設者のルシール・レイボーズと仲西祐介が2023年に立ち上げた国際音楽祭 KYOTOPHONIE も、春と秋の年2回開催され、2023〜25年で延べ約4万人を動員。ジャンルや会場に縛られないボーダレスな音楽体験を生み出してきた。2026年春は、南アフリカのデュオMsaki & Tubatsiがオープニング週を彩り、最終週末にはブラジルのシンガーソングライタードラ・モレレンバウムが登場する予定だ。