写真すべて:「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展ルネサンスからバロックまで」展示風景、国立西洋美術館、2025年
スウェーデン国立美術館の素描コレクションを紹介する展覧会「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」が、国立西洋美術館で開催される。会期は7月1日〜9月28日。
スウェーデンの首都ストックホルムに位置するスウェーデン国立美術館は、同国王家が収集した美術品を基盤とする美術館。なかでも素描コレクションは、世界的にも質量ともに世界屈指のコレクションとして知られている。
その素描コレクションにフォーカスする本展では、ルネサンスからバロックまでの名品約80点を選りすぐって紹介。アルブレヒト・デューラーや、ピーテル・パウル・ルーベンス、レンブラント・ファン・レインといった巨匠の作品をはじめ、素描の世界を存分に堪能できる展覧会となる。
素描とは、木炭やチョーク、ペンなどを用いて、対象の輪郭、質感、明暗などを表現した線描中心の平面作品と定義される。 使用される画材や技法、制作の目的も様々。16〜17世紀の文筆家は、あらゆる造形の基礎と考え高く評価した。美術作品の構想を練るプロセスと結びつく場合も多いが、作者の手の跡がより直接的に感じられ、制作の試行錯誤の過程を垣間見るような臨場感を味わえるのも素描の大きな魅力のひとつ。
温湿度の変化や光に対して脆弱で影響を受けやすいため、通常、海外で収蔵されている素描作品を日本で公開することには困難を伴う。スウェーデン国立美術館の素描コレクションがこれほどまとまった数で来日するのは初めての機会だ。
本展は、イタリア、フランス、ドイツ、ネーデルラントと制作された国ごとに紹介。地域ごとの違いや、時代によって応じた様式の変化に注目しても面白いだろう。
たとえば、イタリアでバロック様式を確立したアンニーバレ・カラッチの素描画。16世紀末頃、マニエリスム期を迎えたイタリアでは、芸術家たちのなかで自然観察への関心が低下する時期もあったが、その後再び重視されるように。この変化において中心的役割を担ったのが、ボローニャ出身のカラッチ一族だった。
フランス出身の彫刻家ルネ・ショヴォーが、スウェーデンの国王付き建築家ニコデムス・テッシンの自邸のために制作した装飾デザインは、竪琴を奏でる芸術の神アポロンと詩神ムーサたちが描かれた優美な作品だ。
ほかにもドイツにおけるルネサンス期を代表するデューラーの肖像素描や、ネーデルラントを代表する画家、レンブラントの作品も見逃せない。
芸術家たちの真髄が凝縮された素描を、ぜひ間近で体験してほしい。