左から、「驚異の部屋の私たち、消滅せよ。 — 森村泰昌・ヤノベケンジ・やなぎみわ —」メインヴィジュアル、カール・ヴァルザー 婦人の肖像 1902 ゴットフリート・ケラー財団(新ビール美術館寄託)、喜多川歌麿 文読む遊女 1805-1806 大英博物館 © The Trustees of the British Museum 2026
2022年に開館し、19世紀後半から現代までの美術やデザインを中心に、約6600点のコレクションを所蔵している大阪中之島美術館。日本と海外の代表的な美術作品を核としながら、地元大阪で繰り広げられた豊かな芸術活動にも目を向けている。このたび、同館で2026年に開催される展覧会のラインナップが発表された。昨年に発表されていたものも含む7つの展覧会を紹介する。
1924年にアンドレ・ブルトンが定義づけた動向である「シュルレアリスム(超現実主義)」。当初は文学における傾向として、無意識や夢に着目したフロイトの精神分析学に影響を受けて発生し、やがて視覚芸術をはじめ、広告やファッション、インテリアなどへ幅広い展開を見せた。本展では、社会に対して政治、日常の両面からアプローチし、芸術的革命をもたらしたシュルレアリスムを、オブジェや絵画、写真、広告、ファッションなど表現媒体をキーワードに解体。シュルレアリスム像の再構築を目指す。サルバドール・ダリ、マックス・エルンスト、ルネ・マグリットらの作品はじめ、シュルレアリスムの名品が大集結する展覧会となる。
ニューヨークを拠点に活動するアーティスト、サラ・モリスによる日本の美術館初となる回顧展。モリスは、大都市の風景を平面に変換した抽象絵画や、それを建築的に展開させたパブリックアート、都市の生態を切り取った映像作品など、多岐にわたる創作活動を続けている。大阪中之島美術館は、モリスが2018年に大阪を舞台に制作した映像作品《サクラ》や、その撮影にインスパイアされた絵画作品《サウンドグラフ》シリーズなどを収蔵している。本展では、これらの近作に加えて、代表作である都市名を冠した幾何学的な絵画や初期作品、これまでの映像作品を一堂に紹介する。
蝋燭や月などのモチーフを独特な写実的筆致で描いた作品で知られる、福岡県久留米市出身の洋画家・髙島野十郎(1890〜1975)。没後50年の節目に行われる本展は過去最大規模の回顧展となり、代表作をはじめ、初公開となる作品も含む約150点が展示される。「孤高の画家」と呼ばれていた野十郎の芸術が形成されたルーツを遡り、青年期や滞欧期の作品など、従来の展覧会ではあまり大きく取り上げられてこなかった部分にも焦点を当て、その芸術の真髄に迫る。
「関西ニューウェーブ」を代表する森村泰昌、ヤノベケンジ、やなぎみわ。国際的に活動しながら一環して関西を拠点とし、時に交錯してきた彼らによる3人展。展覧会は、新作を中心に構成されると同時に、作家それぞれのこれまでの活動が凝縮された「驚異の部屋」になるという。美術とは何かという根源的な問いに立ち向かう3者の個々の作品世界が、美術館という舞台でぶつかり合う。
20世紀のスイスの美術家カール・ヴァルザー(1877〜1943)の日本初個展。ヴァルザーは20代からドイツ・ベルリンに滞在し、当時最先端の美術団体であったベルリン分離派に加わるが、いっぽうで演出家マックス・ラインハルトのもとで舞台美術を手がけ、弟で文筆家のローベルト・ヴァルザーの著書に挿絵を描くなど、多方面で活躍。後半生はスイスに戻り、壁画や室内装飾で評価を高めた。1908年には日本を旅行し、京都の宮津など日本各地の風景や風俗を描いている。本展では、初期の象徴主義的な油彩画から晩年の作品まで、日本での作品を含め広くその画業を紹介する。
1976年の放送開始から2000回を超える長寿番組となったNHK「日曜美術館」。番組の放送50年を迎えるにあたって企画された本展は、番組の歴史と登場した美の魅力を伝えるもの。これまで番組を彩ってきた古代から現代美術に至るまでの数々の名作・名品を5つの章から紹介するとともに、番組出演者たちが紡いできた言葉を過去回から厳選して上映する。さらに最新技術で可能となった高精細映像も組み合わせ、美と人をつないできた「日曜美術館」の歩みを展観する。
1753年に開館した大英博物館は、海外ではもっとも包括的とされる充実した日本美術コレクションを持つ。そのコレクション形成は、ジャポニスムが流行した19世紀末以来、日本の文化に魅了された人々により支えられ、数々の収集家や学芸員が築いたつながりは今日まで受け継がれている。本展では、4万点に及ぶ同館の日本美術コレクションから、喜多川歌麿の貴重な肉筆画《文読む遊女》や円山応挙《虎の子渡し図屏風》、葛飾北斎「万物絵本大全」挿絵素描など、日本初出品を含む江戸時代の屏風、掛軸、絵巻の絵画作品と、歌麿、写楽、北斎、 広重など代表的な8人の浮世絵師による版画を中心に紹介する。