*図やグラフすべて:国立アートリサーチセンターが公開した「「若年層における美術館やアート全般に対する意識調査」調査結果」より、「サマリー」および「調査結果」から許可を得て転載 © 2025 National Center for Art Research
独立行政法人国立美術館 国立アートリサーチセンター(NCAR)は、2024年8月に実施した「若年層における美術館やアート全般に対する意識調査」の結果を発表した。対象は関東・関西圏に居住する15〜25歳の男女1800名。調査からは、美術館に対する若者の距離感や来館動機、アートへの関心の実態が明らかとなった。
「あなたは美術鑑賞のため、 どのくらいの頻度で美術館を訪れていますか」という質問に対して、「年に 1 回以上行く」と答えた高関与層は24.7%、「年に 1 回未満行く」と答えた低関与層は23.6%。高関与層のうち、月に1回以上美術館へ行く人は2.1%、2〜3ヶ月に1回は5.0%であった。
「美術館にはまったく行かない」と答えた無関心層は51.7%であった。さらに「4〜5年に1回以下」の頻度を含めると、約6割が美術館と日常的な接点を持っていない。
エリア別では、関東在住者のほうが関西在住者よりも「美術館に行く」という結果に。関東では52.0%、関西では43.3%となった。
「あなたが初めて美術館に行ったのはいつですか。」という質問に対しては、「6〜12歳」が最多(38.1%)。「初めて美術館を訪れたきっかけ」は「家族に連れられて行った」(52.4%)が圧倒的多数を占めた。いっぽうで、自発的に興味を持って訪れたという回答は9%であった。
美術館の来館動機を確認する「あなたはどんなときに美術館に行っていますか。」という質問に対し、来館の主な動機としては、「その美術館で開催している展覧会が観たいとき」が48.4%と最多。続いて「誰かに誘われたとき」(29.7%)、「建築や雰囲気に惹かれたとき」(23.9%)が挙がった。「SNSの投稿を見て 興味を持ったとき」は15%で、「テレビやインターネット」の情報を見て」(12.3%)をわずかに上回った。「デートの行き先として」は(9.9%)であった。
「美術やアートへのあなたの興味・関心について、 あてはまるものをいくつでもお選びください。」という質問に対しては、「美術作品やアート作品を鑑賞することが好きだ」(14.1%)、「好きな美術作品・アート作品がある」(13.3%)、「何かを描いたり作ったりすることが好きだ」(13.1%)、「美術の授業が好き・好きだった」(12.8%)がほぼ同率。
いっぽうでアートへの興味について「当てはまるものはない」と答えたのは全体の57.3%であった。
また、美術やアートへの興味・関心があると回答した女性は48.9%、男性は37.0%であり、女性は男性よりも美術やアートへの興味・関心が高い傾向があることがわかった。
「次のうち、興味がある・行ってみたい展覧会や イベントはどのようなジャンルですか。」という質問に対し、「海外の有名作家(例:モネ、ゴッホ、ピカソなど)」が31.1%、「マンガ・アニメ・ゲーム」関連が29.2%と高く、続いて「日本の有名作家」「現代アート」が約2割。若者世代においては、ポップカルチャーのジャンルやすでに著名なアートのほうがアクセスしやすい傾向が見える。
NCARは6月30日にも、20〜79歳を対象に実施した「2024年度『美術館に関する意識調査』調査結果」を公開している。こちらの調査での「美術館への来館頻度」では、関東エリアは「美術館にはまったく行かない」が34.4%でもっとも高く、次いで「それ(4〜5年に1回程度)以下」が27.4%、「年に1回程度」10.1%。関西エリアも「美術館にはまったく行かない」が38.1%でもっとも高く、次いで「それ(4〜5年に1回程度)以下」26.9%、「年に1回程度」9.8%。
20〜79歳に比べると、今回の調査で明らかになった15〜25歳の若年層は、「美術館にはまったく行かない」(51.7%)という層が相対的に多いことがわかる。
美術館・アート業界にとって、「無関心層」の拡大は懸念すべき問題だろう。いっぽうで、開催されている展覧会のみならず、美術館の建築や雰囲気、参加イベントやプログラム、グッズなど、来場動機には多様な入り口があることも明らかとなっている。美術館や文化施設は今後、こうした“アートとの出会いのきっかけ”をどのように設計するかが問われていくだろう。
調査名称:「若年層における美術館やアート全般に対する意識調査」
調査対象:15~25歳男女1800人(高校生以上)※「美術館に関する意識調査」の回答者除外
調査期間:本調査:2024年8月5日~8月8日 ※スクリーニング調査なし
URL:https://ncar.artmuseums.go.jp/ reports/ socialcooperation/ awarenesssurveys/ surveyfindings/post2025-2622. html