公開日:2025年1月16日

ヘラルボニーによる企画展 「PARADISCAPE」が渋谷スクランブルスクエア「SKY GALLERY」で開幕。都市の絶景とともに個性豊かな作品を楽しむ

東京・渋谷でおすすめの展覧会「SKY GALLERY EXHIBITION SERIES vol.8「PARADISCAPE」異彩を放つ作家たちが描くせかい」がスタート。障害がある作家たちによる作品の魅力を紹介。会期は1月16日〜3月31日(撮影:編集部[*]を除く)

「障害のイメージを変えること」を掲げるヘラルボニーの展覧会

東京にある大型複合施設「渋谷スクランブルスクエア」の 14、45、46 階・屋上に位置する展望施設「SHIBUYA SKY」内のSKY GALLERYで、 ヘラルボニーが企画する展示「「PARADISCAPE」異彩を放つ作家たちが描くせかい」が開催される。会期は1月16日〜3月31日。全体監修・キュレーションは黒澤浩美(金沢 21 世紀美術館 チーフ・キュレーター、株式会社ヘラルボニーアドバイザー)。

会場風景(*)

ヘラルボニーは、松田崇弥・松田文登の双子の兄弟によって設立されたアートエージェンシーで、国内外の主に知的障害のある作家の描く2000点以上のアートデータのライセンスを管理し、様々なビジネスへ展開している。「異彩を、放て。」をミッションに掲げ、作家への支援ではなく対等なビジネスパートナーとして、作家の意思を尊重しながらプロジェクトを進行し、正当なロイヤリティを支払う仕組みを構築することで注目を集めてきた。

会場にて、ヘラルボニーの代表取締役 松田崇弥・松田文登、本展の全体監修・キュレーションを手がける黒澤浩美、参加作家の鳥山シュウ

本展ではそのアートデータから、この世界の在り方を独自の視点で描いた原画約50点を厳選し、書き下ろし作品とあわせて展示。SKY GALLERYは屋内にある展望回廊にあるので、渋谷の街と空を眺めながら作品を堪能できる。

ヘラルボニーが「異彩作家」と呼ぶアーティストたちの視点から、「生命が輝く世界」の再構築を試みる本展は、3つの章で構成されている。

会場風景

まず「1.アーバンサファリ」は、都市の人工物と多種多様な生き物が共存する風景を体験できるSHIBUYA SKYという場所から発案された。

鳥山シュウ(やまなみ工房)は、本展に先駆けSHIBUYA SKYで展望を体験し、そこからインスピレーションを得た新たな作品を展示する。緻密な線が織りなす広く奥行きのある世界が特徴で、今回のキーヴィジュアル《ひろがる》も手がけた。大好きなアニメやゲームのキャラクターを模写することから発展していった鳥山のアート作品は、普段はモノクロで描かれることが多いが、《ひろがる》は様々な色の組み合わせ。これはSHIBUYA SKYで見た、様々な空の色がインスピレーション源になっているという。作品を間近で見ると、そこには東京タワーやスカイツリー、上野のパンダらしき存在までじつに様々なイメージが描き込まれている。子供から大人まで楽しめるはずだ。

キーヴィジュアル。作品は鳥山シュウ《ひろがる》
会場風景より、左が鳥山シュウ《ひろがる》
鳥山シュウ《ひろがる》の部分

内覧会では、鳥山によるライブペインティングも行われ、その緻密な画面が立ち現れる様子の一部を見ることができた。

鳥山シュウ

小野崎晶は自閉症による困難を経験しながらも、自宅で営業するヘアーサロンでシャンプーなどを担当しながら、休日は精力的に絵を描き続けているという。《わたしのゲルニカ》と題された横長の作品は、カラフルな色や動物たちの愉快な表情など明るさに満ちている。

会場風景より、上が小野崎晶《わたしのゲルニカ》

「2.群と移動」では、厳しい自然を生き抜くための群れが形成する美しいシルエットや、動きのリズムといった自然界の調和を感じさせる作品が並ぶ。

田﨑飛鳥は陸前高田市在住で彼は生まれながらにして、脳性麻痺と知的障害がある作家。東日本大震災の津波により、自宅や、それまで描いてきた約200 点の絵、そして慣れ親しんできた自然の風景や人々を失った喪失感から一度は筆を折ったというが、その後父からの言葉 をきっかけに再び創作を始めた。 陸前高田らしいモチーフの《ウミウ》は、大胆な色使いと構成が印象的な作品。母犬と子犬が描かれた《リリーの思い出》も可愛らしいく、色の配置も絶妙だ。

会場風景より、田﨑飛鳥の作品

筆者が個人的にキュンときたのが、秋山住江による《逆立ちしてるシマウマ》。シマウマたちのユーモラスな姿、色が塗り重ねられた深い紫色の地など、愛らしさに魅入ってしまった。本展ではきっと鑑賞者がそれぞれのお気に入りを見つけることができるだろう。

会場風景より、秋山住江《逆立ちしてるシマウマ》
作品の奥に東京タワーを望む

「3.境界のない世界」では、様々なことで分断され、無意識のうちにも様々な境界を引いてしまうような人々の心性をリセットするような展示だ。

岩瀬俊一(やまなみ工房)は、モチーフを定めたら、画面いっぱいに丁寧に淡々と線を引きながら作品を仕上げていくスタイル。《くじらとサメ》は細い線で描かれているが、画面に現れたフォルムは悠々とした生命の姿を感じさせる。

会場風景より、左が岩瀬俊一《くじらとサメ》

「HERALBONY Art Prize 2024」のグランプリを受賞した浅野春香の作品も圧巻。20歳で統合失調症を発症後、入退院を繰り返しながら作品を制作している作家だ。受賞作《ヒョウカ》はその緻密さと、表面の色や凹凸が生み出すリズムに惹きつけられる。米袋を切り広げた紙を用い、そのシワをポスカでなぞり色を埋めることで生み出された本作。満月の夜のサンゴの産卵をテーマにしているといい、無限に広がる宇宙や生命の連鎖にも想像が促される。

浅野春香《ヒョウカ》部分

46階ではヘラルボニーのアイテムを販売するスーベニアショップも。また本展でしか見られないアート作品が、ヘラルボニーのオンラインストアで購入できる。また会期中は、「ブラインド・コミュニケーター」として活動する石井健介との雑談型鑑賞プログラムも予定されているので、詳しくは公式サイトを確認してほしい。

様々な人や生物が暮らす都会の天上で、理想的な共生の世界への扉をあけてみてはいかがだろうか。

福島夏子(編集部)

福島夏子(編集部)

「Tokyo Art Beat」編集長。『ROCKIN'ON JAPAN』や『美術手帖』編集部を経て、2021年10月より「Tokyo Art Beat」編集部で勤務。2024年5月より現職。