公開日:2024年3月11日

国立西洋美術館で飯山由貴らアーティストがパレスチナ侵攻に抗議、美術館パートナーの川崎重工に訴え。遠藤麻衣と百瀬文の抗議パフォーマンスも

3月12日に開幕する企画展「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか? —— 国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」の内覧会で、アーティストたちが抗議活動

国立西洋美術館にて、抗議する人々

美術館のオフィシャルパートナー、川崎重工に向けた要求

展覧会「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?――国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」の開幕を明日12日に控えた国立西洋美術館で、本展参加アーティストらによる、イスラエルのパレスチナ侵攻への抗議が行われた。

抗議文を読み上げる飯山由貴

抗議行動は「展覧会出品作家有志を中心とする市民」によるもの。「パレスチナで現在起きているイスラエル政府のジェノサイドに強く、強く反対します」と表明し、国立西洋美術館のオフィシャルパートナーである川崎重工業株式会社に対し、イスラエルの武器の輸入の取りやめを要求。また国立西洋美術館に対しては、川崎重工に対しイスラエルの武器の輸入・販売の取りやめを早急に働きかけるよう訴えた。

Tokyo Art Beatが有志に取材したところ、この抗議活動は事前に美術館側に周知せずに行われ、事前に共有されていたのは参加作家のなかでも一部だったという。

会場で撒かれたビラ

抗議が行われたのは同館の企画展示室前のロビー。12時半からプレス向け内覧会が開かれ、企画担当者による説明などが行われていたが、その後、参加作家のひとりである飯山由貴が突如抗議文を読み上げた。その後、上階から「川崎重工/虐殺に/加担するな」と書かれた垂れ幕が報道陣に向けて垂らされ、シュプレヒコールが沸き起こり、一時会場が騒然となった。

川崎重工業と国立西洋美術館は、2023年3月17日にオフィシャルパートナー契約を締結。同館にとってオフィシャルパートナー契約はこれが初の取り組みであった。背景として、同館は「松方コレクション」の保存・公開を目的として1959年に設立されたという経緯があり、この松方コレクションを築いた松方幸次郎は、川崎重工の前身である川崎造船所の初代社長を務めた人物だ。

展覧会「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」は、65年に及ぶ同館の歴史上初めて、現代アーティストたちが展示を行う企画展として開催前から大きな注目を集めていた。こうした特質から同館の歴史を批評的に検討する内容が多く含まれる。展示の冒頭も、同館の基盤となった「松方コレクション」の成り立ちに言及する構成となっている。

百瀬文と遠藤麻衣

また午後4時過ぎ、一般内覧会が開催されている時間に、本展参加作家である遠藤麻衣と、遠藤と過去に共作経験があるアーティストの百瀬文が企画展示室前でゲリラ的な抗議パフォーマンスを行なった。血に濡れたように見える衣装をまとった二人は、手を結んだり垂れ幕を手にしたりしながら、無言で室内をゆっくりと歩き、ガザ侵攻に対する抗議の意思を示した。

有志による抗議はその後、美術館入口などでも行われた

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福島夏子(編集部)

福島夏子(編集部)

「Tokyo Art Beat」編集長。『ROCKIN'ON JAPAN』や『美術手帖』編集部を経て、2021年10月より「Tokyo Art Beat」編集部で勤務。2024年5月より現職。