すみだ五彩の芸術祭 ロゴ
すみだ五彩の芸術祭実行委員会は、2026年9月4日から12月20日まで「すみだ五彩の芸術祭」を発表した。会場は墨田区内各所に広がり、区が主催する数ヶ月規模の芸術祭としては東京23区で初めての開催となる。今回の発表では、ディレクター陣や公式ロゴが公開され、プレイベントや公募プロジェクトも順次展開される予定だ。
芸術祭のテーマは「すみだの五彩」。水墨画に由来する「墨に五彩あり」の言葉を手がかりに、芸術を通じて地域の多彩な魅力や人々のつながりを描き出す。
コンセプトは「発気揚々」。相撲の掛け声「はっきよい」にも通じるこの言葉を掲げ、観客が作品を巡りながら語り合うことで、地域がかけがえのない場へと育っていくことを目指す。
エグゼクティブディレクターを務めるのは、千葉大学教授の神野真吾だ。神野は「墨田区に生きる人々は個性的で地域への愛情が強く、多様な活動を生み出している。これこそが墨田を特徴づける力である」と語る。また「一見、黒にしか見えない墨に多様な彩りが潜むように、墨田も表面的には見えにくいが、踏み込めば豊かな魅力を備えている」と述べ、「この芸術祭が、墨田と人々の新しい関係を築く場になることを願う」とコメントした。
ディレクターにはキュレーターの青木彬、墨田区文化振興財団と「隅田川 森羅万象 墨に夢」統括する荻原康子、音楽プロデューサーとNPO法人トッピングイースト代表である清宮陵一、地域コーディネーター三田大介の4名が就任した。
本芸術祭では、地域に根ざした「すみだらしさ」を前面に押し出す作品が展開される。墨田の歴史的建造物に山口藍ら現代アーティストが作品を展示する予定だ。蔵真墨は街の人々を撮影した写真展示を行う。岡田裕子は「本所七不思議」を題材に、スマートフォンを通じて現実とフィクションを行き来する体験型作品を構想する。さらに、謎音研究所は向島や鐘ヶ淵を舞台にツアー形式の演劇を展開し、山崎広太は「隅田川物」を手がかりに新作ダンス公演を上演。劇団扉座は立川志の輔の創作落語「歓喜の歌」をすみだ版へと翻案し、地域住民と共演する舞台を繰り広げる。
現段階では本開催の全貌は未発表であるが、2025年10月24日に開催される関連企画「すみゆめ踊行列 DAY1/未来を生きるあなたへ」には既に出演者が明らかになっている。会場は隅田公園そよ風ひろば。音楽と行列を組み合わせた野外参加型イベントとして実施される。坂本美雨、曽我部恵一、アン・サリーが登場し、高田漣が音楽監督を務めるほか、すみだ少年少女合唱団やトリフォニーホール・ジュニア・オーケストラのメンバー、さらに伊賀航、伊藤大地、ハタヤテツヤといったミュージシャンも参加予定。芸術祭に先立ち、地域とアーティストが交わる祝祭的な場が展開されることになるだろう。
墨田区は、これまでも「すみだトリフォニーホール」や「すみだ北斎美術館」などを拠点に文化活動を展開してきたほか、10年間にわたり「隅田川 森羅万象 墨に夢(すみゆめ)」を実施し、巨大紙相撲や生演奏の盆踊りといった試みを重ねてきた。世代を超えた交流を生み出してきたその積み重ねを、新たなかたちで昇華させるのが「すみだ五彩の芸術祭」である。23区初の区主催芸術祭として、地域と芸術の未来を問う試みが本格的に始まろうとしている。