2004年にスタートしたTokyo Art Beat(TAB)は、2024年で20周年を迎えます。
いつも応援してくださる皆様、誠にありがとうございます。おかげ様で全国の展覧会情報を常時1000件公開し、アートシーンのいまに迫る記事も毎日更新。月間PV600万を誇る国内最大規模のアートメディアとして、TABは成長することができました。
この記念すべきアニバーサリー・イヤーをユーザー・読者の皆様とともに祝うべく、この度「Tokyo Art Beat 20周年アワード」を実施しました。
本アワードは、TABが創立した2004年から今年6月までの約20年間に開幕した展覧会から、ユーザー・読者の皆さんにとっての”ベスト展覧会”を投票で募り、表彰するもの。
今回ついに、このアワードの結果を発表いたします!
【選考プロセス】
①推薦アンケート実施:7月1日〜7月8日
ユーザーからの候補展覧会の推薦を募るアンケートをオンラインで実施。②400件の候補展覧会を選出
上記アンケートで寄せられた展覧会とTABチームのリサーチとを合わせて検討し、400件の展覧会を「ベスト展覧会」候補に選出(400件のうち巡回展は1件の展覧会としてカウント)。
400件のノミネート展覧会一覧リスト③ユーザー投票:7月22日〜8月12日
ユーザー投票をオンラインフォームで実施。400件の候補展覧会を①2004〜08年開幕、②2009〜13年開幕、③2014〜18年開幕、④2019〜24年6月開幕の4期間にわけ、お一人につき1期間5件まで投票可とした。合わせて投票した展覧会に関するコメントも募集。(詳細はこちら)④アワード結果発表:8月31日
本稿にて、投票結果を発表。
それでは、4つの期間ごとに1〜10位までの展覧会を発表します! 見事1位に輝いた展覧会については、関係者からコメントをいただきました。また、ユーザーから投票時に寄せられた、思い出の展覧会に関するコメントも合わせてご紹介します。
日本屈指の現代美術のコレクターとして知られる精神科医・高橋龍太郎さんが収集した作品を展示し、1990年代〜2000年代における日本の現代美術の流れと動向をたどった「ネオテニー・ジャパン―高橋コレクション」展が第1位に選ばれました!
2008年7月に鹿児島県霧島アートの森でスタートし、2010年の愛媛県美術館に至るまで7館を巡回。「neoteny(幼形成熟の意)」をキーワードに、奈良美智さん、村上隆さんをはじめとする30人以上の作家の作品から構成されました。本展を見て日本の現代アートに興味を持ったという人も多いのではないでしょうか。
(*鹿児島県霧島アートの森での開幕日が2008年であることから、「2004〜2008年開幕」にてノミネート)
【ユーザーからのコメント】
現代美術への関心はここから始まったと言っても過言ではない。(匿名希望)
衝撃を受けるほど良く、その後現代アートを見るきっかけとなった。(やんばる)
伊藤存をここで初めて知りました。ギャラリーではなく、アートコレクター個人の名を冠した展示が公共の美術館で現代に開催されることがすごい!と感じた。高橋コレクションを見たおかげで、一般人にもアートを購入するという選択肢があるんだと気づき、その後の生活を豊かにしてくれた。(伊藤ミーナ)
伊藤若冲ブームを巻き起こした「プライスコレクション 若冲と江戸絵画展」が2位にランクイン! 全国4館を巡回した本展。東京国立博物館では1日平均約6500人、2ヶ月弱で約32万人の来館者を集め、イギリスの美術専門紙「アートニュースペーパー」のランキングでは1日の平均入場者数が世界一と発表されるなど大きな話題となりました。
3位の「大竹伸朗 全景 1955-2006」は、東京都現代美術館の3フロアを埋め尽くすように作品が配された圧巻の展示、そしてその極太の展覧会カタログが伝説として語り継がれる展覧会。Tokyo Art Beat 20周年特集シリーズ「これまでの20年 これからの20年」では、本展について企画担当者の藪前知子さんにお話を聞いているので、ぜひこちらの記事も合わせてご覧ください。
【ユーザーからのコメント】
「プライスコレクション 若冲と江戸絵画展」京都国立近代美術館、東京国立博物館、九州国立博物館、愛知県美術館(2006〜2007)
みた!という展示でした。若冲ぐらいの時代にはかなり現代性があり、古いのか新しいのか分からなくなることしばし。また海外に流出してしまったけれども大事にしてくれる人のところで本当に良かった…という展示でした。その後散り散りになることなく日本の美術館に寄贈して下さり感謝しかないです。(上)
江戸絵画の魅力にハマったきっかけになった展覧会。閉会3日前に慌てて訪問し、その素晴らしさに驚いて閉会日に再訪した思い出に残る展覧会です。(nipponia-nippon)
「大竹伸朗 全景 1955-2006」東京都現代美術館(2006)
本当に好きで現代美術館に着いた時、宇和島駅のネオンサインが見えた時は感動しました。全景と言う名前らしく大竹さんの当時の作品の全景、生活している宇和島の全景を思うような作品が見れて興奮しました。何時間もいた記憶があります。(ヨネダ)
1日では観きれないほどのエネルギーに圧倒されて、何度も通った思い出があります。作品集も同じように重くて大きくて、憧れたなあ・・・(Akiko)
【ユーザーからのコメント】
「2014〜2018年」の様々な展覧会に寄せられた、ユーザーからのコメントをご紹介します。
「YOSHITOMO NARA + graf A to Z」吉野町煉瓦倉庫(2006)
結婚前の夫と初めて一緒に訪れた展覧会。奈良美智作品を見るために行ったが、旅行だったこともあり、展覧会だけでなく彼の生まれ育った街とその文化、土壌も含め「弘前」を満喫できたのが嬉しい。(mix)
「西野達 天上のシェリー」銀座メゾンエルメス(2006)
エルメスの展覧会の中でも1番印象的でした。そんなところに登って言っていいのかという、ドキドキと恐怖と、中に入った時の衝撃と普通のギャップがなんとも言えず凄く記憶に残っている。(ワタナベ)
「鳥獣戯画がやってきた!―国宝『鳥獣人物戯画絵巻』の全貌―」サントリー美術館(2007)
正直なところ、長時間並んだという記憶が9割を占めているが、今までひっそりと鳥獣戯画を愛でているつもりだったが、世の中にはこれだけ同志がいるのかと感動した。ディズニーランドより並んだ。(そーま)
「塩田千春 精神の呼吸」国立国際美術館(2008)
塩田千春さんを初めて知ったのが此の展覧会でした。一人一人の個人的な、温度を持った思い出が赤い糸で紡がれて、一つの漂着地へ集っていく作品が、彩り豊かながらも普遍性を感じられてじっくりと魅入ってしまいます。(SUi)
「アネット・メサジェ:聖と俗の使者たち」森美術館(2008)
美大受験を控え暗鬱とした時に観に行ったのですが、空間を支配する力を見せつけられ、まずは歩みを止めないで手を動かし続けようと励まされた展示でした。(走る犬)
「横浜トリエンナーレ2008 TIME CREVASSE ータイムクレヴァスー」新港ピアほか(2008)
至極個人的な思い出ですが、この展示は大学の課題で訪れた展覧会でした。「この展示の展評を書きなさい」という課題で、展評なんてどう書けばいいかもわからないまま展示を観て、見よう見真似で展評を書いた覚えがあります。ただ今思えば、この展覧会が「作品を鑑賞すること」、そして「それを言葉にすること」の難しさや楽しさを知るきっかけになった展示だったと思います。その後の進路を決める、私の中では大きな展覧会でした。(匿名希望)
会田誠さんの美術館での初個展「会田誠展:天才でごめんなさい」が第1位となりました! デビューから20年以上にわたる作家の全貌を、新作を含む約100点を通して明らかにした本展。新作《ジャンブル・オブ・100フラワーズ》《電信柱、カラス、その他》や、前年に起きた東日本大震災後の日本社会を反映した作品などが話題を呼び、エロスや公共性など様々な要素を含んだ作品の多面的かつ複雑な魅力が多くの鑑賞者を惹きつけました。
【ユーザーからのコメント】
会田誠さんの展覧会、絶対に見に行きたくて岡山から行ったなあ。天才でいてくれて心からありがとう、と今でも思う。(rya)
絵画作品を中心としながら、森美術館の広大な空間を活かした大判の作品も観られて印象深い展覧会です。当時は珍しかったと思うのですが、展覧会の前にクラウドファンディング(勧進プロジェクト)を行ったのも印象的で、それに参加することで、より展覧会に感情移入できたような気もします。(ぷらいまり)
狂気のようであり、冷静な天才であり、会田誠が詰まっていた。(Yuiii)
第2位は「フランシス・ベーコン展」。20世紀を代表する画家ベーコンの、日本では30年以上ぶりの美術館個展。大作を多く含むベーコン作品が多数展示されました。
第3位は「瀬戸内国際芸術祭2010 アートと海を巡る百日間の冒険」 。いまではアートシーンに欠かせない”瀬戸芸”の記念すべき初回です。
【ユーザーからのコメント】
「フランシス・ベーコン展」東京国立近代美術館 、豊田市美術館(2013)
ベーコンのおもしろさを堪能できた。まとめてたくさん観れて幸せだった。(齋藤路恵)
これでもかというぐらいの期待を携え観に行き、期待を遥かに超えた完璧で究極の展覧会です。(fig)
「瀬戸内国際芸術祭2010 アートと海を巡る百日間の冒険」 直島、豊島ほか(2010)
友人たちと一緒に巡りました。芸術祭をきっかけに、周辺出身の友人の実家や、おばあちゃまの家を泊まってまわりました。アートに普段から興味がある人、ない人も含めて「これ、なんだろうね」と言ったり、地域との交流も自然に生まれたり、芸術祭の良さや意義を、深く感じられました。(はやおう)
瀬戸芸の初回、何もかもにワクワクしながら島を巡った記憶。ここが私の芸術祭の原点かと思う。ここ最近は行けてないので次は子どもと行きたい!(Ayako)
【ユーザーからのコメント】
「2009〜2013年」の様々な展覧会に寄せられた、ユーザーからのコメントをご紹介します。
「内藤礼 すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」神奈川県立近代美術館 鎌倉(2009〜2010)
子供がとても気に入って鑑賞した帰宅後、家の中に水を入れた小皿を並べて「作品なの!触らないで」と言ったのが懐かしいです。素敵な体験でした。(Seina)
「NO MAN'S LAND : 創造と破壊」在日フランス大使館(2009〜2010)
図録をかっておけばよかったと悔やまれるほど思い出深い展覧会。美術館ではなく、大使館という実際に仕事をしていた場所をつかって、さまざまな作品を見ることができた貴重な展覧会。作品のなかに自分がはいりこんでしまったかのような不思議な体験であった。人生の中でも忘れられない展覧会の1つ。(lime)
「手塚愛子:落ちる絵 — あやとり」ケンジタキギャラリー(2009)
「Tokyo Art Beat 20周年アワード」は20年間400展示のなかからユーザーみんなでベスト展覧会を選ぶというコンセプトだが、あの展覧会が候補にノミネートされてないの、、?と、当然ながらがっかりすることもある。
しかし、候補の中に手塚愛子さんの名前を見つけたのはとても嬉しかった。初めて作品を拝見して、手塚愛子さんの名前をみて、年季の入ったアンティークのような「織物」を観て、そして作品には美しさに加えて強度を感じて、まず田中敦子さんや三島喜美代さんのような日本美術史に乗るような年配の作家だと思ったのだ。実態は同世代の等身大の女性で、今はベルリンに拠点を移している。手塚愛子さんは卒業のテーマにデュシャンを選ぶ研究者でもあり引き抜いた糸と木枠をもって織物を絵画として捉えている。この展覧会がベストなのかはわからないが、ベストと言ってしまうのであれば近い将来、手塚愛子さん自身がそのベストを塗り替えるのではないか。(花崎徹治)
「Chim↑Pom展:にんげんていいな」山本現代(2009)
残飯のようなオブジェが散乱して、生身の人間までもが展示されていて、「これがアート?」と、当時はかなり戸惑い、衝撃を受けた展覧会でした。あまりに理解が追いつかなかったものの「分からないからこそ理解したい」という気持ちが生じて、そこからChim↑Pomの作品を繰り返し観に行くようになりました。
個人的に、こういった展覧会に触れたことで、「わからないからこそ、もっとちゃんと観よう」という感覚が生まれ、そのあとの現代アートで分からない作品や自分の思想と異なる作品に出会ったら、もっと観よう・考えようという考え方にシフトしていったように思えます。(ぷらいまり)
「トランスフォーメーション」東京都現代美術館(2010)
今ほど多様な生き方が可視化されていなかった頃、「トランスフォーメーション」というコンセプト自体が人を勇気づけさせていたように思う。想像の外にある他者へと意識を向けさせる一歩としても素晴らしい展覧会だった。(かとう)
第1位に輝いたのは、国立新美術館「ミュシャ展」。日本とチェコが国交を回復してから記念すべき60周年に開催された本展は、ミュシャが晩年の約16年間を捧げた渾身の作品《スラヴ叙事詩》(1912〜1926)がチェコ国外では世界で初めて、全20点まとめて公開されるという空前の展覧会となりました。約6m×8mにも及ぶ巨大な20点の油彩画は、スラヴ民族の苦難と栄光の歴史を映し出す壮大なスペクタクル。まさか日本で見られるとは考えられなかった傑作を目の前にして、圧倒された人も多いことでしょう。
【ユーザーからのコメント】
学生時代、近代西洋美術史の教授が「ミュシャの『スラヴ叙事詩』は日本に来ることはないが、一生のうち一度は見ておきなさい」と言っていた。まさかその「スラヴ叙事詩」が日本に来るなんて! 大画面に圧倒された!(あさみ)
美術にあまり興味がなかった母親が、美麗な作品たちに触れてとても楽しそうで、この展覧会をきっかけに母と美術館に行く回数がぐんと増えました。(かおり)
「未来の発見!」をテーマに掲げた「さいたまトリエンナーレ2016」が第2位、そして全長100mに及ぶ超大作《五百羅漢図》が日本で初公開された「村上隆の五百羅漢図展」が第3位に輝きました。
【ユーザーからのコメント】
「さいたまトリエンナーレ2016 」さいたま市内各所(2016)
過疎地でもない、観光都市でもない、生活都市の日常の中で現代アートがどのような力を持ち得るかにチャレンジした新しい芸術祭(匿名希望)
目[mé]の「Elemental Detection」、事前情報なし、前後にお客さんなしで、その場に私たちだけで作品に対峙し、時間をかけて一歩踏み出した時の感動がいまだに忘れられない。(そーま)
「村上隆の五百羅漢図展」森美術館(2015〜2016)
サイズと物量に圧倒される。ひとつの工場のように作品を制作していく形が新しかった。(tkng)
【ユーザーからのコメント】
「2014〜2018年」の様々な展覧会に寄せられた、ユーザーからのコメントをご紹介します。
「PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015」京都市美術館ほか(2015)
定期的な国際展を想定していたが1度で終わったしまった名残惜しい展覧会。しかしこれほど尖った展覧会はその後いまだ見たことがない。「アートフォビア」という言葉を生んだほど、難解ではあるが、論考が多数掲載された分厚いカタログが開幕時前に発売され、無料のハンドブックが用意されるなど、行き届いたキュレーションも極めて高く評価できる。当時、全て撮影可という現代アート展も珍しく、その先鞭をつけたともいえる。(堀間律人 @forimalist)
「春画展」永青文庫(2015)
大英博物館の春画展(2013年)の開催の頃から、日本での春画展の開催の経緯をずっと横目で見てきた人間なので、永青文庫の開催は非常に感慨深いものがありました。美術館での春画展の開催は、大きな一歩だったと思います。(松崎未來)
「闇に刻む光 アジアの木版画運動1930s-2010s」福岡アジア美術館、アーツ前橋(2018〜2019)
アジア美術を紹介する潮流の中にあって、一つの極点。黒ぐろとした木版画の意義を、歴史と地理の網の目の中にどこまでも追いかけ、地味さに滋味を滲ませる。後の横浜トリエンナーレなどにも影響を及ぼす重要な展示だと思います。(原 智治)
「パロディ、二重の声 ――日本の一九七〇年代前後左右」東京ステーションギャラリー(2017)
テーマが面白い展覧会でした。日本の1970年代というまだあまり研究の進んでいない時代の文化・芸術を、幅広いジャンルに渡って「パロディ」というキーワードでまとめ上げ、展示として見せたことは担当学芸員さんの手腕を感じます。(匿名希望)
「ライアン・ガンダー ―この翼は飛ぶためのものではない」国立国際美術館(2017)
元々作家が好きなこともあるのですが、広い空間で大型のインスタレーション作品を一挙に観られたことがとても嬉しかったです。カタログが売り切れで手に入れられなかったことだけが心残り…。(匿名希望)
「内藤 礼―明るい地上には あなたの姿が見える」水戸芸術館 現代美術ギャラリー(2018)
出産して間もない頃、夫に赤ちゃんを頼んで、遠出した。水戸は遠かった。時間を惜しんで展示を観た。内藤礼の展示を観るときの、中に入っていくような、水に濡れる感覚は忘れられない。広い部屋のなかで宇宙大の生命のふしぎが、私とあなたのこととして落とし込まれている。(けいと)
「リー・キット:僕らはもっと繊細だった。」原美術館(2018)
原美術館の空間との親和性を最も感じた展示でした。これを2度と体験することができないのが残念でなりません。(吉岡直哉)
具象と抽象を行き来しながら絵画表現の可能性を探求し続け、現代最高峰の画家とも称されるゲルハルト・リヒターさん。その日本での16年ぶりの大規模個展「ゲルハルト・リヒター展」が第1位に輝きました! 東京国立近代美術館と豊田市美術館、個性の異なるふたつの会場でリヒター芸術を堪能することができた本展。近年の最重要作《ビルケナウ》に、鑑賞者は様々な思いを馳せたのではないでしょうか。Tokyo Art Beatでは当時、本展を担当するふたりのキュレーター、桝田倫広さんと鈴木俊晴さんのロング対談を実施し、こちらの記事も好評を博しました。
【ユーザーからのコメント】
国内久しぶりのリヒター展で、時代によって変化してきたリヒターの活動を知ることができる展示になっていました。また、展示スペースが広い一つの空間のようになっており導線らしい導線もなく、リヒターの大きな作品を行ったり来たりしながら鑑賞することで、作品の色覚が訴える正と負の感情を受け止めることができました。(はりー)
ビルケナウに心打たれました。展示空間も豊田市美術館の方が国立近代美術館よりも天井高も高く、採光も良くて、作品の色彩がいきいきとしていてよかったです(tuckr)
ビルゲナウを一室丸ごと使っての展示。部屋に入ると室温が一度下がったような、それでいて厳かな気持ちにさせる。絵画が空間込みの表現であること、どんなに解像度が高くても展示会場に実際に足を運ばねば出来ない感情体験だった(ふにゃん)
2021年に惜しくも亡くなった、フランスを代表する現代アーティストの個展「クリスチャン・ボルタンスキー – Lifetime」が第2位、現在日本でもっとも注目を集めるアーティストグループによる驚きの展覧会「目 [mé]非常にはっきりとわからない」が第3位にランクインしました。
【ユーザーからのコメント】
「クリスチャン・ボルタンスキー – Lifetime」国立国際美術館、国立新美術館、長崎県美術館(2019〜2020)
死という生きていく上で切っても切り離せないものについての考え方が、作家と自分とで共鳴したような気がして、そんなことは全く初めてのことだったが今でも救いになっている。もう2度とボルタンスキーの新作とは出会えなくとも、あの体験が記憶から消えてしまうまでずっと支えになるだろうと思えるくらいに印象に残った。(お湯)
美術館に行くというのは、ポジティブであり楽しい、きらきらしたイメージがあると思いますが、この展示ではお葬式に参列するような厳粛な雰囲気が会場内に広がっていました。作品として死者への作品が多く、展示スペースも暗く仄かな光の中で見るのがメインだったせいか、とても重く、美術館で味わうにはとても不思議な感覚でした。 自分自身の祖先や、周囲で亡くなった方々を振り返り、この展示を通し、交流できたような気分で見たのを記憶しています。(深紅 翔)
「目 [mé]非常にはっきりとわからない」千葉市美術館(2019)
展示そのものに観衆を組み込むことは以前にもあったものの、展示のメインとなる行為を「観衆が観ること」として成立させたことにまず驚きました。また、間違い探しという手法によって細部を観ようとするように仕向けることは、真似できない展示であると強く感じた。(セイシ)
ネタバレを禁止していたわけではないのに、SNSで「詳しくは書けないけどすごい」という口コミで美術好きではない人にも広まっていた印象。実際に行ってみてすごかった…千葉まで行く価値があった。(numa)
【ユーザーからのコメント】
「2019〜2024年」の様々な展覧会に寄せられた、ユーザーからのコメントをご紹介します。
「ソフィ カル ─ 限局性激痛」原美術館 (2019)
微妙なニュアンスを絶妙に訳した日本語テキスト。
原文のすばらしさへの想像。
刺繍としてつづられた文字。
記憶を伝えてくる写真。
1日ごとに変わり減ってゆく一文字・一文に、気持ちの消失を覚え、進んでは戻るを何度も繰り返して鑑賞しました。
原美術館だからこその雰囲気とマッチし忘れられない展覧会でした。(タッカー)
「ジョゼフ・コーネル コラージュ&モンタージュ」DIC川村記念美術館(2019)
とにかくポスターから図録からもちろん作品の展示までDIC川村記念美術館のコーネルへの力の入れようは感動的。箱の裏側までみえてしまう展示方法、小さな小さな作品や手紙など、人の嗜好や内面を覗くような後ろめたさとコーネルと親密な何かを共有できたような気分を味わった。貴重な映像作品は少し意外な印象だった。(santsumi)
「トム・サックス ティーセレモニー」東京オペラシティ アートギャラリー(2019)
金継ぎしてあるNASAロゴ入りのお茶碗がとてもかわいくて欲しいなあと思いました。あと、お茶室の三人形の蓋置がヨーダ(しかも内向き)だったのを強烈に覚えてる。(しおこんぶ)
「岡上淑子 フォトコラージュ沈黙の奇蹟」東京都庭園美術館(2019)
いつまでも見ていたくなるシュールでチャーミングなコラージュ作品たち。クリエーティブ業界での女性の活躍は、現在も発展途上ですが、当時の日本で自分を持ち続けた作家さんの、自らを鼓舞する力にも、とてもインスパイアされました。展覧会図録を集め始めたきっかけにもなった展覧会です。(はやおう)
「へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで」府中市美術館(2019)
ルソー、蘆雪、若冲、国芳を「へそまがり」と括ってしまう発想や、それに並べて徳川家光の「へたうま」を展示してしまう視点がとても面白かったです。(ikesho)
「松田修:こんなはずじゃない」無人島プロダクション(2020)
奴隷の椅子という作品を見た時の衝撃が忘れられない。こんなに根本的な呪いを直接的に語っても良かったんだと呆気にとられた。ユーモアを着飾り、強烈な怨念や直視したくない現実をピエロのように披露する松田修さんを見て、刺客だと思いました。(名前未記入)
「ミヒャエル・ボレマンス マーク・マンダース|ダブル・サイレンス」金沢21世紀美術館(2020)
マークマンダースを初めて知った展覧会。その不思議な質感と存在感に魅了され、その後も何度か別の美術館の展覧会に足を運んだが、あの不思議な輝きは、ミヒャエル・ボレマンスとのコラボ、そして金沢21世紀美術館での展示だったからこそだったのだと後になって知った貴重な経験。(mix)
「佐藤雅晴 尾行-存在の不在/不在の存在」大分県立美術館、水戸芸術館 現代美術ギャラリー(2021〜2022)
特に《東京尾行》。ドビュッシー《月の光》のピアノの無人自動演奏がBGMになっていることもあるのだと思いますが、こんなにも切ないインスタレーションがあるのかと。佐藤雅晴の作品には初期から、物悲しい通奏低音がただよっています。2019年3月に45歳で早世されているのですが、この寂寥感はどうしてもそのことと結びついてしまいます。
デジタル写真を丁寧にレタッチしたフォトデジタルペインティングの技法による作品群は以前から図版では見た記憶がありますが、実物は今回が初見でした。これらも動画やアニメーションの作品同様、作家 佐藤雅晴がコツコツと膨大な時間をかけ、丁寧に制作したであろうことが容易に想像できるものでした。」(堀間律人 @forimalist)
「ナラティブの修復」せんだいメディアテーク(2021)
「仙台」「宮城」「(3.11以外含む)震災」の最低限何れかにそれぞれ関わる10のナラティブ(もの語り)の技法に強めの訴求力も加わり、大変充実した内容のグループ展に仕上がってました。今後も追い続けたくなった作家の方々を何組か知れた中で、糸井貫二さんが会期中に101歳で大往生を遂げたりも。(みなみむさし)
「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策 写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策」アーティゾン美術館(2022)
近代以前のコレクション作品と現代作品を並列させるような展覧会は多々ありますが、こんなにも見事に作品同士が響き合うような展覧会は稀だと感じました。並べる、ではなく作品同士の対話、になっていた点が、作品自体としても展覧会としても成功している展示だと感じました。(匿名希望)
「カラーフィールド 色の海を泳ぐ」DIC川村記念美術館(2022)
"カラーフィールド”という概念を初めて知った展覧会。会場に足を踏み入れるや否や、色たちの持つ力に魅了され、ぐっとその世界に引き込まれた。副題「色の海を泳ぐ」の通り、色の波間に身を委ね、空間を気持ちよく泳ぐように鑑賞した記憶。会期中遠方から2度も足を運び、その後もジュールズ・オリツキー《高み》がDIC川村記念美術館に展示されているのが心から嬉しい。(mix)
「デイヴィッド・ホックニー展」東京都現代美術館(2023)
とてもとても大好きなアーティスト。現物をこんなにたくさん見たのは初めてだった。ただただ本人の絵を描くことが「好き」という感情が見えたように思う。何歳になっても大きな作品に挑んだり、その年齢でずっとファインアートをやってきた人がデジタルに手を出すというのは、多くのアーティストは少し怯むものだと思うけれど、新しい利器を取り入れ制作していること、若々しさをずっと感じてとても励まされたし、嬉しく思った。(真秀)
「日常アップデート」東京都渋谷公園通りギャラリー(2024)
誰もが参加・体験でき、楽しめるだけでなく、視野が広がる素晴らしい空間でした。特に手話での情報保障が充実していたので、他の美術館や展覧会でも、これが日常になると嬉しいなぁと思いました。(Tournesol)
いかがでしたか?
ご覧いただいた読者の皆様の心にも、様々な展覧会の思い出が蘇ってきたのではないでしょうか。
ユーザーの皆さん、投票とコメントをどうもありがとうございました!
そして数々の素晴らしい展覧会の開催のためにご尽力されたすべての方にお礼を申し上げます。
Tokyo Art Beatはこれからも「"Wonder of Art" の旅に出よう」を掲げ、皆さんのアートの旅路の良き伴走者になれるよう努力を重ねてまいります。まずは次の20年を目指して、今後ともよろしくお願いします!
*20周年特集「TABの20年、アートシーンの20年」はこちらから