公開日:2025年10月9日

東京ステーションギャラリー、2026年度の展覧会スケジュールが公開。「水滸伝」展、カール・ヴァルザー展、染織家・山鹿清華展など

日本近代洋画から20世紀ノルウェーの風景画まで、7つの展覧会を紹介

左から、ニコライ・アストルップ ルバーブ 1911-21 DNB貯蓄銀行財団/コーデ・ベルゲン美術館、歌川国芳 通俗水滸傳豪傑百八人之一個 九紋龍史進 跳澗虎陳達 文政10(1827)頃 個人蔵、山鹿清華 手織錦壁掛 星座・月・ロケット 1958 京都市美術館

1988年から東京駅丸の内駅舎内で活動を続ける東京ステーションギャラリー。このたび、同館で2026年から2027年にかけて開催される展覧会のラインナップが発表された。7つの展覧会を見どころとあわせて紹介する。

「小林徳三郎」/11月22日~2026年1月18日

日本近代洋画の改革期に活躍した画家・小林徳三郎(1884〜1949)の初となる大回顧展。前衛洋画家集団フュウザン会で活躍し、画業半ば頃からは春陽会で作品を発表した小林は、魚や野菜、家族、風景などの日常的な題材を、親しみやすく、かつ洒脱な作品に描き上げた。死後、美術界での扱いの低さに対して、画家の硲伊之助が「もっと評価されるべき画家」と憤慨したという逸話も残っている。本展では、約300点の作品と資料により、その画業の展開を追う。

小林徳三郎 金魚を見る子供 1929 広島県立美術館

「大西茂 写真と墨象(仮称)」/2026年1月31日~3月29日

数学から写真、そして墨象へと、唯一無二の道を歩んだ孤高の芸術家・大西茂(1928〜94)。戦後日本が躍動を始めた1950年代に、位相数学に基づく独創的な写真と墨象を世に問い、瀧口修造、ミシェル・タピエといった同時代のパイオニアたちからも一目置かれる存在だった。ニューヨーク近代美術館など欧米でも絶賛された大西の芸術は、現在、再評価の途上にある。本展は、国際的に活躍した知られざる異才の、日本では初めての本格的な回顧展となる。

大西茂 (題不詳) 1950年代 © Estate of Shigeru Onishi, courtesy of MEM

「カール・ヴァルザー(仮称)」2026年4月18日~6月21日

20世紀前半のスイスで活躍した異才カール・ヴァルザー(1877〜1943)。ベルン近郊のビールに生まれ、20代でベルリンに出たのち、ベルリン分離派に加わって象徴主義的な絵画作品を多く残した。1908年にはドイツの小説家ベルンハルト・ケラーマンともに日本を訪れており、横浜や京都・宮津などに滞在して日本の風景や風俗を主に水彩で描いた作品を熱心に制作した。本展では、これまでほとんど公開されてこなかったこれらの仕事に加え、挿絵や舞台美術、壁画でも活躍したヴァルザーの全貌を伝えることを試みる。すべて日本初公開の作品で構成される。

カール・ヴァルザー 婦人の肖像 1902 ゴットフリート・ケラー財団(新ビール美術館寄託)

「生誕130年 前田寛治(仮称)」/2026年7月4日~8月30日

33歳の若さでこの世を去った前田寛治(1896〜1930)は、いまなお日本の近代洋画界を代表する画家のひとりに位置付けられている。パリ留学を含むわずか10年あまりの活動期間に、自身の詩的感性と西洋絵画の伝統を踏まえた写実性を融合させることを追求し、その芸術を多様に花開かせた。前田の生誕130年と、前田がパリ留学時の仲間たちと結成した「一九三〇年協会」創立100周年の節目に開催される本展では、前田の画業を回顧しながら、一九三〇年協会の会員たちの作品もあわせて展示し、その意義を再検証する。

前田寛治 棟梁の家族 1928 鳥取県立美術館

「水滸伝(仮称)」/2026年9月19日~11月8日

明時代に成立した武侠小説で、中国四大奇書のひとつとされる『水滸伝』は、江戸時代に日本に伝わり、爆発的な人気を得た。曲亭馬琴は葛飾北斎の挿絵で『新編水滸伝』を出版、さらにその日本版ともいえる『南総里見八犬伝』など多くの翻案作品も生まれたほか、歌川国芳が描いた豪傑たちの錦絵は作家の出世作となった。現代日本においても、小説、映画、ドラマ、漫画、ゲームなどに取り上げられ、高い人気を誇るコンテンツになっている。これまでの『水滸伝』にまつわる展覧会の多くが、版本や国芳の浮世絵に焦点を当てるものだったのに対し、本展では『水滸伝』を通じて北宋~清の多彩な中国美術と江戸~現代に至るまでの日本美術を多角的に展観し、『水滸伝』の奥深い魅力に迫る。中国と日本の美術に親しみながら、その受容史から各時代の世相や思想、理想に触れる機会となる。

歌川国芳 通俗水滸傳豪傑百八人之一個 九紋龍史進 跳澗虎陳達 文政10(1827)頃 個人蔵

「ニコライ・アストルップ(仮称)」/2026年11月21日~2027年1月31日

20世紀初頭のノルウェーでもっとも傑出した画家のひとりとして、近年、世界的にも評価が高まるニコライ・アストルップ(1880〜1928)。生涯のほとんどを雄大な自然に囲まれたノルウェー南西部、ヨルステル湖畔で過ごし、季節ごとに変化する風景を描いた。幻想的な夏至祭の夜や、日用品に彩られた室内、自ら育てた庭の植物など、自然に溶け込み、内部からその豊かな世界を描き続けたアストルップの絵画は、奥深い魅力で見る者の心を惹きつける。本展では、油彩画に加え、作家がとりわけ卓越した仕事を残した木版画の作品も紹介。ノルウェーから来日する作品約130点から、アストルップの世界を展観する。

ニコライ・アストルップ ルバーブ 1911-21 DNB貯蓄銀行財団/コーデ・ベルゲン美術館

「生誕140年記念 山鹿清華(仮称)」/2027年2月20日~4月11日

染織家・山鹿清華(1885〜1981)の40年ぶりの回顧展。京都で活版印刷業を営む家に生まれた山鹿は、10代の頃に西陣織の図案と日本画を学び始め、その後、神坂雪佳に師事し、創作の幅を広げていく。図案、糸の選択、織りまでの工程をひとりで行う「手織錦」を自ら創案したことで勢いをつけ、1927年に新設されたばかりの帝展・美術工芸部門で特選を受賞。寺院の仏幡やお祭りの懸装品、緞帳、客船の室内装飾、タペストリーなど幅広く手がけ、伝統的なものから奇抜なものまで、多様な図柄を主題とした。生誕140年を記念して行われる本展では、代表作や織下絵、資料などからその歩みを振り返る。

山鹿清華 手織錦壁掛 星座・月・ロケット 1958 京都市美術館

Art Beat News

Art Beat News

Art Beat Newsでは、アート・デザインにまつわる国内外の重要なニュースをお伝えしていきます。