喜多川歌麿《婦人相学十躰 ポッピンを吹く娘》 寛政4-5(1792-93)頃 大判錦絵 版元:蔦屋重三郎 展示期間:5月20日~6月15日(後期展示) 撮影:東京国立博物館
喜多川歌麿の代表作のひとつ《婦人相学十躰 ポッピンを吹く娘》が約43年ぶりに再発見。現在、東京国立博物館で開催中の特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」で5月20日から特別公開される。
「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」展に関連する調査のなかで再発見された《婦人相学十躰 ポッピンを吹く娘》は、歌麿による美人大首絵を代表する一図で、ガラス細工のおもちゃであるポッピンで遊ぶ若い町娘が描かれている。身体を振り向けた勢いで大きく翻る市松模様の振袖や、その一瞬の動きをとらえた描写、クローズアップされたあどけない表情などが見どころだ。
歌麿は、寛政4年(1792)頃から版元・蔦屋重三郎より美人大首絵の出版を始め、人気を博した。「10通りの女性を描き分ける」という意味をタイトルに冠した「婦人相学十躰」(ふじんそうがくじってい)はその最初期のシリーズだが、何らかの理由で刊行途中に揃物名が「婦女人相十品」に変更となり、8図が刊行された時点で制作が中断されたと考えられている。
《ポッピンを吹く娘》は、「十躰」と「十品」どちらのシリーズ名でも出版された貴重な作例で、とくに「十躰」の題を持つ作品は初期に摺られたという点で重要であり、今回の再発見までは、ホノルル美術館が所蔵する1枚のみが現存例として知られていた。
このたび再発見された作品は、1985年にパリのセーヌ通りに画廊を開き、当時ヨーロッパで流行したジャポニスムの影響下で浮世絵を愛好した人物エルンスト・ル・ヴェールの旧蔵品だという。一般的に浮世絵は、初摺に近いほど輪郭線がシャープで、作品全体の仕上がりに版元や絵師の意向が強く反映されているとされているが、本作は保存状態が極めて良好で、クリアな輪郭線や鮮やかな色彩が残されている。
展示期間は、「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」の後期展示期間である5月20日から6月15日まで。発見されたばかりの作品を目にすることのできる貴重な機会となる。