「ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?」(2021)会場風景より、《鳥葬(箱根)》2017-2018年 鋳放しの鋳造ガラス ポーラ美術館 © Roni Horn Photo: Koroda Takeru
天候を気にせず、ゆっくりと屋内で過ごせることは美術館の魅力のひとつ。雨によって外出がおっくうに感じた時こそ、美術館へにお出かけを考えてみるのはいかが? ここでは、「雨を避ける」「雨の日ならではの景色を楽しむ」というふたつの切り口から、雨の日を存分に楽しむことの出来る美術館を紹介する。
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あまり知られていないが、じつは駅直通ルートが存在する三菱一号館美術館。丸の内地下南口改札から、JR京葉線方面へと向かい、商業施設・丸の内ブリックスクエアの地下1階を経由すると、雨に濡れずに美術館まで辿り着ける。現在は、印象派/ポスト印象派の巨匠ふたりに焦点を当てた「ルノワール×セザンヌ ―モダンを拓いた2人の巨匠」展が開催中。会期は9月7日まで。TAB有料会員向けのお得なクーポンを使うのも忘れずに。
東京メトロ千代田線、乃木坂駅から直通の入口を持つ国立新美術館。ガラス張りの建築は黒川紀章が手がけたもので、同館を象徴する波打つようなガラスウォールは雨の日にも映えること間違いなし。現在はル・コルビュジエらが試みた、生活空間におけるモダニズムをとらえる「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s–1970s」展が開催中。会期は6月30日まで。
JR恵比寿駅東口から、恵比寿ガーデンプレイス方面へと向かう動く歩道「恵比寿スカイウォーク」を使えば、雨の日もほぼ外を通らずに行ける東京都写真美術館。「写真」「映像」をメインにした美術館は世界でも稀であり、立地もガーデンプレイスの敷地内なので、展覧会を見た後の予定にも困らなそうだ。現在は、原子爆弾投下直後の広島の惨状を伝える「被爆80年企画展 ヒロシマ1945」展が開催中。会期は8月17日まで。また、7月からは開館30周年特別展として「総合開館30周年記念 ルイジ・ギッリ」、「総合開館30周年記念 TOPコレクション トランスフィジカル」もスタートする。
2025年5月、みなとみらい線新高島駅の地下1階直結の空間に新たに誕生したアートセンター「Art Center NEW」。展示スペースはもちろん、ZINE、古書、アーティストグッズなどを販売するショップやカフェスペースなども併設されている。現在は、こけら落としとなるグランドオープン記念展覧会「NEW Days」が開催中。「日常」や「日々」、そして「続いていくこと」「変化していくこと」というキーワードをもとに制作された現代アート作品が展示されている。会期は7月20日まで。
東京国立博物館の敷地内にある、世界最古の木造建築物である法隆寺の貴重な宝物を保存・展示する施設。谷口吉生が手がけた建築は、自然光を多く取り込む開放的な造りで、雨の日はエントランスの水盤に広がる波紋が非常に美しい。1階の展示室に《四十八体仏》(6〜8世紀頃)が立ち並ぶ様は荘厳かつ神秘的で、もしまだ見たことがなければぜひ訪れてみて欲しいアートスポット。同館へと向かう道すがら、国立西洋美術館や東京都美術館といった近隣の美術館に寄りやすいのも嬉しいポイントだ。
東武鉄道の社長などを務めた実業家・根津嘉一郎の古美術品コレクションを保存・展示することを目的に作られた根津美術館。嘉一郎の時代から受け継がれる同館の日本庭園は、自然の傾斜を生かした深山幽谷の趣のある造りが魅力的。建築は隈研吾によるもので、庭園の自然と一体化するように作られた建築から四季や天候の変化も楽しめる。また、入館者限定で入れるミュージアムカフェNEZUCAFÉにも、同館に来たからには是非訪れたい。現在は、「はじめての古美術鑑賞 - 写経と墨蹟 - 」展が開催中。会期は7月6日まで。
近代数奇屋建築の巨匠・吉田五十八が建築を手がけた五島美術館。平安時代の貴族の邸宅「寝殿造」の要素を取り入れた和洋折衷の空間では、同時代の作品である《源氏物語絵巻》、《紫式部日記絵巻》をはじめとする、日本の古美術にまつわる展覧会が開催されている。また、敷地内の回遊式庭園で見られる椿山やつつじが丘、枝垂れ桜などの四季の花々のほか、日本各地から引き取った石仏も見どころのひとつだ。あたりに響く雨の音を聞きながら、美術、そして建築が織りなす幽玄の世界に耽溺したい。
箱根の山間にそびえるポーラ美術館。森との共生をテーマに建てられた、光とガラスに映る木々の美しい建築はもちろんだが、敷地内の「森の遊歩道」に展示されている屋外彫刻も同館の必見スポット。もし雨が小降りであれば、ロニ・ホーンの彫刻作品《鳥葬(箱根)》(2017-18)は、ぜひ雨の日に見ることを勧めたい。ガラスを支持体とした屋外彫刻が雨に打たれながら白く光を反射している光景は、いつまでも見ていたいほど幻想的。現在は、ライアン・ガンダーの個展「ライアン・ガンダー:ユー・コンプリート・ミー」展、ゴッホの後世への影響に焦点を当てた「ゴッホ・インパクト―生成する情熱」展が開催中。どちらも要注目の展覧会だ。
2024年に建築のノーベル賞ことプリツカー賞を受賞した山本理顕が建築を手がけている横須賀美術館。ガラスと鉄板の入れ子構造からなる外観が特徴的な同館の建築からは、雨にうたれる深い緑の森、海に浮かぶ船など、時間の流れを感じさせる景色を望むことができる。また、同館は紫陽花の名所としても知られており、例年6月上旬〜中旬が見頃。横須賀駅からバスを乗り継ぐ必要はあるものの、雨の日の紫陽花と名建築、そしてアートを楽しめるスポットとして、ぜひお出かけの候補に加えてみて欲しい。
出版社のKADOKAWAが運営する、図書館と美術館、そして博物館が一体となった施設の角川武蔵野ミュージアム。隈研吾が設計を手がけた、およそ50kg~70kgの花崗岩を約2万枚も使用した外壁からなる、多面的で幾何学的な外観は、光の反射によってその表情を変える。世界を読み解くための9つのテーマによって配架された、25000冊の本が並ぶ「エディットタウン ブックストリート」で読書をゆっくり楽しんだり、体験型の展覧会を見たりと、大人も子供も一緒になって楽しめるような美術館だ。