タカ・イシイギャラリー京都 Courtesy of Taka Ishii Gallery Photo:Yasushi Ichikawa
お寺に神社、美術館など、アート好きには行きたい場所に事欠かない京都。秋には国際的なアートフェア「Art Collaboration Kyoto(ACK)」の時期に合わせ、いくつものアートイベントが同時開催される。京都府と京都市が2025年の10月〜11月を「京都アート月間」として、一括して情報発信し、複数のイベントを回遊しやすくしている。2025年は同時期にアートフェア「CURATION⇄FAIR」も初開催。ギャラリーにも力の入った展示が揃う時期だ。京都らしい町家や伝統的な街並みのなかにあるギャラリーも多く、ほかの都市にはない鑑賞環境が楽しめる京都で、街歩きとアートを楽しんでほしい。
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タカ・イシイギャラリー 京都は、築150年の町家の陰影に満ちた空間に作品を展示。アーティストたちがこの場所からインスパイアされて制作する展示がユニーク。オープニング展(2023)ではサーニャ・カンタロフスキーが民話の怪異をテーマに個展を制作。
ル・コルビュジエ、ジャン・プルーヴェなどの家具の展覧会「Affinités(アフィニテ)」では、名作のフォルムと和室の空間と協奏した。時間の蓄積した場と現代の創造とのインタラクションが刺激的だ。


エンアーツ(eN arts)は、京都の観光の中心地・祇園の円山公園のなかという、意外なロケーションにあるギャラリー。外観は和のデザインで、茶室もあり、展覧会をする作家が床の間での展示に挑戦するのが、ほかでは見られない趣向となっている。
漆を用いた立体の白子勝之、炎を使って制作する田中真吾など、個展を重ね作家の試みや変化を見守る展開が面白い。エッジな映像表現を紹介する、清水穣キュレーションによる写真展showcaseも、毎年、回を重ねている。


祇園の骨董店街、古門前。ものづくりの精神を受け継ぐ街で、コンテンポラリーな工芸の表現に特化して展開するギャラリー艸居(そうきょ)。取扱作家は三島喜美代(陶芸)、青木千絵(漆芸)、ジェニファー・リー(陶芸、平面)など。梅津庸一の実験的な陶芸作品は、個展だけでなく、シルヴィ・オーブレとのコラボレーションにも展開して紹介。河原町二条に艸居Annexがあり、2ヶ所同時開催の個展も。
2024年からアーティスト・イン・レジデンスを開始し、国内外からアーティストやキュレーターを招聘。京都の作家や職人との共同制作にも取り組んでいる。作品の制作・展示・販売をすべて京都で行うことで、環境への負荷を軽減する仕組みの構築も目指している。


艸居と同じ新門前にあるのが、ロサンゼルスのギャラリー、ノナカ・ヒルが2023年に京都に出店したノナカ・ヒル京都 。本田健の木炭画と尾花智子の陶器、合田佐和子の平面と磁器彫刻家川端健太郎の二人展など、コンテンポラリーアートの視点を通した工芸のプレゼンテーションに斬新さがある。
日本に深いゆかりを持つロドニー・ノナカヒルと、ノナカヒル孝義、共同経営者のふたりが眼差す日本文化へのビジョンが、京都らしい路地奥にあるギャラリーに醸成されている。


思文閣は、ノナカ・ヒル京都のある新門前通から1本北の通り、古門前通にある。昭和12(1937)年に創業。古文書、日本美術、古典籍を扱いながら、京都本店と東京・銀座にもスペースを構え、文化や地域、時代を超えた作品同士のインタラクションから新たな視点で日本美術の価値を伝えている。
三嶋りつ惠のガラス作品が迎える高級感に満ちた店構えは、おいそれと入店できない空気もあるが、臆せずお邪魔したい。ほかのギャラリーでは味わえない贅沢な鑑賞体験ができる。


西陣の町家を明るく開放的な空間にリノベーションしたギャラリーヘプタゴン(GALLERY HEPTAGON)は、リビング空間とギャラリー空間を併設し、そのリラックスした雰囲気そのまま、暮らしとアートを接続するアート展示やイベントを行っている。平面/立体アート作品には、張り子、盆栽、漆、紙の造形など、素材と手仕事が際立つものが多い。
ほかに食・衣・住にかかわる展示会や、ワークショップ、イベントも随時開催している。2025年11月23日まで、漆作家・永守紋子×木版画作家・杉本奈奈重による二人展を開催中。


禅宗、臨済宗・大徳寺派の総本山、大徳寺の近くに2023年にオープンしたOSCAAR MOULIGNE。内部が見えないパビリオンのような外観、2階部分の床が傾斜し、建築的にも見どころがある建物は、魚谷繁礼の設計。
現代社会に重要なインパクトを与えるアーティストの作品を紹介し、新しい価値観や見方、既存の可能性にとらわれないインターナショナルなプラットフォームを共有する。2025年にはダニエル・ボイド(Daniel Boyd)、Andy Hope 1930の個展などを開催。11月14日から2026年3月28日まで、ガブリエル・オロスコ(Gabriel Orozco)展を開催。


イムラアートギャラリーは、1990年に現代美術のアートスペースとしてオープン。伊庭靖子(絵画)、辻村史朗(陶芸)、三瀬夏之介(日本画)、樂雅臣(陶芸)、川人綾(絵画)、山本太郎(日本画)など、京都に根ざした伝統を踏襲しながら、現代にふさわしい新たな表現を開拓する作家を紹介する。大通りに面した路面のギャラリーは、気軽に立ち寄りやすい。
所属作家による個展の所属作家による個展のほか、「アンディ・ウォーホル・キョウト」展(京都市京セラ美術館、2022〜23)をはじめ、美術館の企画も手掛ける。


元印刷所跡地の3階建ビルをギャラリー、ショップ、イベントスペースの「棒ビル」にリノベーション。アート展示だけでなく、オリジナルグッズ、ウエア、陶器の販売、とビル丸ごとで複合的に展開するVOU / 棒。あたかも解体中のようなラフな内装から、既成概念をリセット、再構築する感覚が、独特の世界観。
VOUギャラリーで紹介する若手作家には、1980年代〜90年代生まれ=「ジェネレーションY」のキレのある作品が多い。


京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAは、2023年に京都市立芸術大学の京都駅東南部への移転に伴い、堀川御池から新しいキャンパス内に移転。名前の「@KCUA(アクア)」には、芸術が水のように人々の暮らしに浸透し、創造力豊かな社会に貢献するという同学の理念が反映されている。
京都駅から徒歩圏で通りからのアクセスもよく、誰にでも開かれたアートの場を体現している。展覧会やワークショップやレクチャー、アートプロジェクトなどが展開される。

