2025年下半期に東京で開催されるおすすめ展覧会をピックアップ。気になる展覧会はウェブ版でのログインやTABアプリでブックマークがおすすめ。アプリでは、開幕と閉幕間近をプッシュ通知でお知らせします。
日本を代表する造形作家であるとともに、建築や環境文化圏計画、絵本、ロボット開発などの幅広い表現領域を手がけ、さらには文化全般にわたる批評家としても活躍してきた岡﨑乾二郎の核心に迫る東京における初の大規模な展覧会。近年国際的な評価も高まる岡﨑が大きく転回した2021年以降の新作を中心に、過去の代表作も網羅しつつ、世界認識の方法としての造形の可能性と力を提示する。展示の様子はこちらのフォトレポートから。同期間に「開館30周年記念 MOTコレクション 9つのプロフィール 1935→2025」展も開催中。
会場:東京都現代美術館
会期:4月29日〜7月21日
パリのオランジュリー美術館が、ピエール=オーギュスト・ルノワールとポール・セザンヌというふたりの印象派・ポスト印象派の画家に、初めて同時にフォーカスし、企画・監修をした世界巡回展。三菱一号館美術館が日本唯一の会場となる。ルノワールの代表作《ピアノを弾く少女たち》やセザンヌの代表作《画家の息子の肖像》をはじめとし、ふたりの巨匠による肖像画、静物画、風景画、そして、ふたりから影響を受けたピカソを加え約50点の作品から、モダン・アートの原点を探る。レポートはこちら。
会場:三菱一号館美術館
会期:5月29日~9月7日
スタジオジブリ作品の魅力を立体造型で再現する展覧会が、22年ぶりに東京で開催中。『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』『平成狸合戦ぽんぽこ』『耳をすませば』といった名作群の印象的な場面が、精緻な造型物として会場に立ち現れる。さらに、宮﨑駿監督が2002年に手がけた短編アニメーション『空想の空とぶ機械達』の特別上映も実施。映像と造形の交差によって、ジブリ世界の奥行きを体感できる空間が広がる。レポートを公開中。
会場:寺田倉庫B&C HALL/E HALL
会期:5月27日〜9月23日
昭和初期のアール・デコ様式をいまに伝える旧朝香宮邸は、1933年に竣工した国指定重要文化財である。本展は、年に一度の建物公開展として、建築空間の機能とその変遷に焦点を当てるものである。朝香宮家の邸宅としての14年間、吉田茂元首相が政務の場として活用した7年間、国の迎賓館として、数々の国賓をもてなした19年間、民間の催事施設として、多くの人々に開かれた7年間、そして美術館としての42年間など、時代ごとに建物がどのような機能や役割を果たし、人々と共生してきたのかを探る。各時代を彩るゆかりの作品や写真・映像資料を通して、建物の記憶をひもとく。ニュースはこちら。
会場:東京都庭園美術館
会期:6月7日〜8月24日
石橋財団が長年にわたり収集してきたオーストラリア現代美術のなかから、初めて女性アボリジナル作家に焦点を当てた展覧会。国際的に再評価が進むアボリジナル・アートの動向とも呼応し、地域に根ざした多様な表現を紹介する。所蔵作家4名を含む、計7名と1組の作家による作品を通じて、オーストラリア先住民美術への理解を深めるとともに、現代アートとしての魅力を再発見する機会となる。
会場:アーティゾン美術館
会期:6月24日〜9月21日
高畑勲の生誕90年、そして太平洋戦争終戦から80年という節目の年に開催される本展は、スタジオジブリの企画協力のもと、その創作の原点に迫る回顧展である。『火垂るの墓』と『アルプスの少女ハイジ』を象徴に据えつつ、スタジオジブリ以前のキャリアを中心に、高畑が築いたリアリズムと人間描写の系譜をたどる。アニメーションに対する独自の哲学や演出手法、表現の進化を通して、日本アニメーションの礎を築いたその軌跡を浮き彫りにする。詳細はニュースをチェック。
会場:麻布台ヒルズ ギャラリー
会期:6月27日〜9月15日
スウェーデン国立美術館のコレクションにフォーカスする本展では、ルネサンスからバロックまでの名品約80点を選りすぐって紹介。素描とは、木炭やチョーク、ペンなどを用いて対象の輪郭、質感、明暗などを表現した線描中心の平面作品を指すが、環境の変化や光、振動などの影響を受けやすいため、通常、海外で収蔵されている素描作品を日本で公開することは難しい。スウェーデン国立美術館の素描コレクションがこれほどまとまった数で来日するのは初めての機会となる。ニュースはこちら。
会場:国立西洋美術館
会期:7月1日〜9月28日
東京とパリ、深圳に設計事務所を構え、個人住宅から大学、商業施設、ホテル、複合施設まで、世界各地でプロジェクトを展開している建築家の藤本壮介。本展は、藤本にとって初の大規模な回顧展であり、活動初期から世界各地で現在進行中のプロジェクトまで主要作品を多数紹介し、四半世紀にわたる建築家としての歩みや建築的特徴、思想を概観する。模型や設計図面、記録写真に加えて原寸大模型やインスタレーションなども展示に含まれる。詳細はニュースをチェック。
会場:森美術館
会期:7月2日~11月9日
欧米での個展の開催やドキュメンタリー映画の発表など、近年国際的に注目されるイタリアの写真家、ルイジ・ギッリ。その類稀な色彩、空間、光への美的感覚と、ありふれたものをユーモラスに視覚化する才能により、写真表現を新たなレベルへと引き上げた。本展は、ギッリによるアジア初の美術館個展となる。
会場:東京都写真美術館
会期:7月3日〜9月28日
藤田嗣治の絵画制作を、「写真」を通じて再考する展覧会。世界中を旅した藤田は、生涯にわたって数千点におよぶ写真を残した。本展では、藤田の絵画に現れる写真の断片を探り当て、写真活用のプロセスを検証するとともに、日本とフランス・エソンヌ県に現存する彼の写真を多数紹介し、藤田の知られざる魅力に迫る。また、写真と絵画によって重層的かつ巧妙に演出された藤田自身のイメージにも注目。「描くこと」と「撮ること」を行き来した「眼の軌跡」を追いかけ、これまでにない語り方で藤田を紹介する。
会場:東京ステーションギャラリー
会期:7月5日~8月31日
戦前から画業を始め、戦後は日本の抽象絵画のパイオニアとして足跡を残した難波田龍起。海外から流入する動向を咀嚼しながらも、情報に流されたり特定の運動に属したりすることなく、独自の道を探求した。難波田の生誕120周年を機に行われる本展では、同館収蔵品に加え、全国の美術館の所蔵品、個人像の作品なども交え、難波田の画業の全貌を振り返り、今日的な視点から検証する。
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
会期:7月11日〜10月2日
絵画的な表現を持った陶芸作品や絵画から影響を受けた陶芸などを「ピクチャレスク陶芸」ととらえ、20〜21世紀の日本の陶芸を横断的に紹介する。民藝からうつわ、伝統工芸、前衛陶芸、コンテンポラリーまでを含む約80点が集結。アートの視点から日本近現代陶芸史の一面を俯瞰する。
会場:パナソニック汐留美術館
会期:7月12日〜9月15日
「ムーミン」の生みの親であり、絵画や風刺画、マンガ、絵本、小説など多方面に才能を発揮したアーティスト、トーベ・ヤンソンの創作世界に迫る展覧会。初期の油彩画や第二次世界大戦期の風刺画、『ムーミン』小説やコミックスの原画、スケッチ、愛用品など約300点を展示。絵画や文学、マンガといった多彩な表現を通じて、トーベの芸術家としての歩みと人生に迫る。ムーミンに込められた深いメッセージを読み解く貴重な機会となる。詳細はニュースをチェック。
会場:森アーツセンターギャラリー
会期:7月16日〜9月17日
現在の皇居にあたる江戸城には、かつて将軍の後宮「大奥」が存在していた。御台所や側室、女中たちが暮らしたその世界には、徳川家という巨大な権力のもとで生きた女性たちの栄枯盛衰が浮かび上がる。いっぽうで、壁書や女中法度といった規則に縛られた閉ざされた日常のなか、彼女たちはそれぞれの人生における喜びや悲しみを抱えていた。本展では、芝居やドラマで描かれる華やかなイメージとは異なる、大奥の知られざる素顔に、貴重な史料やゆかりの品々を通して迫る。
会場:東京国立博物館
会期:7月19日~9月21日
今年開館30周年を迎える東京都現代美術館が、より多様化する社会のなかで、美術館が果たす役割を問い直す記念展を開催。本展では、ある場所や空間がどのような力学でかたち作られ、変容するのか、それはどのように人々の生き方に影響するのかを、幅広い視点から探求する作品を紹介する。会期中は若手アーティストらによるパフォーマンスやワークショップ、ツアーなども行う予定。また、同期間には「笹本晃 ラボラトリー」展も開催される。詳細はニュースをチェック。
会場:東京都現代美術館
会期:8月23日〜11月24日
本展は、アジアを代表する美術館のひとつである香港の現代美術館M+と国立新美術館による共同キュレーションによって実現。平成が幕を開けた1989年から2010年までの約20年間にわたって、日本のアートシーンに登場した革新的な表現に光を当てる。50を超える国内外のアーティストによる実践を通じて、表現がどのように時代や社会と交差し、反応してきたかが立体的に描き出される。ニュースはこちら。
会場:国立新美術館
会期:9月3日〜12月8日
鎌倉時代を代表する仏師・運慶の仏像が安置される空間をそのまま伝える奈良・興福寺の北円堂。本尊の弥勒如来坐像と、両脇に控える無著・世親菩薩立像は、運慶晩年の傑作として広く知られている。北円堂は通常非公開だが、弥勒如来坐像の修理完成を記念し、約60年ぶりの寺外公開が決定。本展では、弥勒如来坐像、無著・世親菩薩立像と、かつて北円堂に安置されていたとされる四天王立像の合計7軀の国宝仏を一堂に展示し、鎌倉復興当時の北円堂内陣の再現を試みる。
会場:東京国立博物館
会期:9月9日~11月30日
アムステルダムのファン・ゴッホ美術館には、画家フィンセント・ファン・ゴッホの約200点の油彩や500点にのぼる素描をはじめ、手紙や関連作品、浮世絵版画などが所蔵されている。そのほとんどは1973年の開館時に、フィンセント・ファン・ゴッホ財団が永久貸与したものだ。本展では、ファン・ゴッホ美術館の作品を中心に、ファン・ゴッホの作品30点以上に加え、日本初公開となるファン・ゴッホの手紙4通なども展示し、家族が守り受け継いできたコレクションを紹介する。なお本展は巡回展であり、大阪市立美術館で7月5日〜8月31日、愛知県美術館で2026年1月3日〜3月23日に開催予定。詳細はニュースをチェック。
会場:東京都美術館
会期:9月12日〜12月21日
ローマを代表するジュエリーブランド、ブルガリが、日本で10年ぶりとなる過去最大規模の展覧会を開催。色彩・文化・技巧に焦点を当て、貴重な個人コレクションを含む約350点のジュエリーがメゾンの歴史を彩る。タイトル「カレイドス」は、ギリシャ語で「美しい(カロス)」と「形態(エイドス)」を意味し、美と創造性が調和するダイナミックな色彩世界の旅を象徴する。ブルガリ・ヘリテージ・コレクションに加え、森万里子、ララ・ファヴァレット、中山晃子による現代アート作品も展示される予定だ。
会場:国立新美術館
会期:9月17日〜12月15日
熊谷守一が朴訥と描いた猫の絵、猪熊弦一郎のモダンな猫の絵。日本の洋画家たちは、個性的な猫の絵を数多く残してきた。猫が脇役とされてきた西洋美術とは対照的に、藤田嗣治が猫を主役として描き、日本の猫の絵の流れを作ったとも言われる。本展では、洋画における猫に焦点を当て、多彩な表現とともにその魅力を紹介する。
会場:府中市美術館
会期:9月20日〜12月7日
当時の鑑賞者にとって、ヴァーチャル・リアリティーのような迫力で眼前に迫ってきた円山応挙の作品。その画風は瞬く間に京都画壇を席巻、多くの弟子が応挙を慕い、巨匠として円山四条派を形成した。本展では、応挙を18世紀京都画壇最大の革新者として、そこから「巨匠」になっていく様を、重要な作品を通して検証する。
会場:三井記念美術館
会期:9月26日~11月24日
旧朝香宮邸の設計や装飾に多大な影響を与えたパリの「アール・デコ博覧会」の開催100周年を記念する展覧会。フランスを代表する宝飾メゾン「ヴァン クリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels)」の作品から、アール・デコ博覧会の宝飾部門でグランプリを受賞した《絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット》をはじめ、歴史的価値が認められる「パトリモニー コレクション」より厳選された名品が一堂に会し、アール・デコの魅力を伝える。
会期:東京都庭園美術館
会期:9月27日~2026年1月18日
重要文化財《黒き猫》は、36歳で夭折した画家・菱田春草が晩年に残した代表作のひとつ。永青文庫でも不動の人気を誇る本作は、クラウドファンディングでの支援と、国・東京都・文京区からの補助により、初めて本格的修理が行われた。本展はその修理完成を記念するもので、《黒き猫》や《落葉》(重要文化財)など同館が所蔵する春草作品全4点を期間限定公開。
会場:永青文庫
会期:10月4日~11月30日
19世紀末から20世紀初頭のウィーンにおける優れたデザインや装飾がみられる家具や工芸作品などのモダンな作品群、またそれらの近代的なスタイルのルーツのひとつであるビーダーマイヤー時代の工芸作品を紹介。銀器、陶磁器、ガラス、ジュエリー、衣装、インテリアなど、このふたつの時代に制作された工芸とデザインを通して、ウィーンにおける「総合芸術」の精神を明らかにする。また、これまで日本ではあまり知られてこなかった女性の先駆的なデザイナー・クリエイターにも焦点を当てる。
会場:パナソニック汐留美術館
会期:10月4日〜12月17日
大阪・関西万博2025にちなみ、20世紀初頭の博覧会に出品した岩﨑家所蔵の光琳派や肉筆浮世絵、近代絵画などを皮切りに、国宝1件、重要文化財13件、博覧会出品作10件余りを一挙公開。菊池容斎の破格の巨大絵画も展示される。なお、前後期(前期:10月4日~11月9日、後期:11月11日~12月21日)で展示がほぼ総入替となる。
会場:静嘉堂文庫美術館
会期:10月4日~12月21日
2020年から毎年行われている石橋財団コレクションとアーティストとの共演「ジャム・セッション」の第6回となる本展では、山城知佳子と志賀理江子を迎える。近・現代日本が生み出した矛盾と抑圧、沖縄戦や集中する米軍基地など、生まれ育った土地にある複雑で歪な状況を、ときにユーモアを交えて描き出す山城と、2008年から宮城県を拠点とし、東日本大震災と復興、あるいはそれ以前から作用していた中心と周縁の不均衡な力学のなかに立ち現れる生のあり方に光を当てる志賀。ふたりの新作を通じて、過去から続く複雑で困難な現実に向き合う作家たちの態度と、創造力と芸術という手法のあり方をコレクション作品のうちにも見出し、紹介する。
会場:アーティゾン美術館
会期:10月11日〜2026年1月12日
1920年代に世界を席巻した装飾様式「アール・デコ」は、服飾の世界にも広がりを見せた。パリで開催された「アール・デコ博覧会」から100周年の節目にあたり、本展では京都服飾文化研究財団(KCI)が所蔵する服飾作品約60点を中心に展示する。さらに、国内外の美術館所蔵の絵画、版画、工芸品なども加え、現代にも影響を与え続ける100年前の「モード」の魅力と革新性を多角的にひもとく。
会場:三菱一号館美術館
会期:10月11日〜2026年1月25日
「印象派の殿堂」として知られるパリ・オルセー美術館から10年ぶりにコレクションが大規模来日。傑作68点を中心に、国内の重要作品も加えた約100点により、室内をめぐる印象派の画家たちの関心のありかや表現上の挑戦をたどる。エドガー・ドカの代表作《家族の肖像(ベレッリ家)》は日本で初めて展示される。
会場:国立西洋美術館
会期:10月25日〜2026年2月15日
日本近代洋画の改革期に活動した画家・小林徳三郎。若者たちが結成した前衛洋画家集団フュウザン会で活躍し、画業半ば頃からは春陽会を中心に作品の発表を続けた。鰯や鯵といった魚を数多く描いて評価を獲得し、やがて自分の子供たちをモデルにするようになり、風景、海などの題材を親しみやすく洒脱な作品に描き上げた。本展では、小林が描いた日常的な光景を紹介するほか、彼をとりまく美術動向にもフォーカスする。
会場:東京ステーションギャラリー
会期:11月22日~2026年1月18日
森美術館で2004年から3年に一度開催する、日本のアートシーンを総覧する定点観測的なシリーズ展「六本木クロッシング」の第8回目。アジアを拠点にグローバルなアートシーンで活躍するレオナルド・バルトロメウス(山口情報芸術センター[YCAM]キュレーター)、キム・ヘジュ(シンガポール美術館シニア・キュレーター)と協働し、国際的な視点から日本のアートをとらえる本展では、日本のアートのいまと、それが大きな文脈の中でどのような意義を持つのかを、あらためて検証する。
会場:森美術館
会期:12月3日~2026年4月5日