2025年下半期に東京で開催されるおすすめ展覧会をピックアップ。気になる展覧会はウェブ版でのログインやTABアプリでブックマークがおすすめ。アプリでは、開幕と閉幕間近をプッシュ通知でお知らせします。
25歳で世を去った画家オーブリー・ビアズリーは、ろうそくの光をたよりに、精緻な線描や大胆な白と黒の色面からなる、きわめて洗練された作品を描き続けた。本展は、19世紀末の欧米を騒然とさせたビアズリーの歩みをたどる、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)との共同企画。初期から晩年までの挿絵や希少な直筆の素描に加え、彩色されたポスターや同時代の装飾など、約200点を通じてビアズリーの芸術を見る。高知県立美術館(11月1日~2026年1月18日)に巡回予定。2月15日から5月11日まで、東京の三菱一号館美術館で開催された本展のレポートはこちら。
会場:久留米市美術館
会期:5月24日~8月31日
ポストモダン以降、絵画は従来のタブローとしての絵画から脱却し、絵画それ自体をメディウム化する方向へと展開してきた。オブジェを組み合わせてイリュージョンを排除するような絵画、空間全体を取り込むような絵画、作者が架空と実在を行き来するような絵画、現実と虚構に揺さぶりをかける絵画、パフォーマンスや映像を組み合わせた絵画、絵画それ自体の存在を問うような絵画などの取り組みは、現実の世界と深いつながりを結んでいる。本展では、対極する戦後ドイツの画家、ゲルハルト・リヒターとアンゼルム・キーファーを起点に、絵画における表現の可能性を探究し、それぞれの手法や視点から独自の「絵画」に取り組むアーティストの作品が集結する。レポートを公開中。
会場:金沢21世紀美術館
会期:4月29日〜9月28日
2022年からプレイベントを行ってきた「Study:大阪関西国際芸術祭」が、大阪・関西万博にあわせて本祭として開催。安藤忠雄の設計による大阪文化館・天保山(旧サントリー・ミュージアム)を会場に、ロン・ミュエク、パトリシア・ピッチニーニ、マウリツィオ・カテランらが、ハイパーリアリスティックな彫刻作品を発表。さらに、釜ヶ崎芸術大学やkioku手芸館 たんすを拠点とする「NISHINARI YOSHIO」が西成エリアを舞台に参加し、地域に根ざした表現を展開する。万博という国際的な舞台において、大阪の多層的な文化が交差する貴重な機会となる。「大阪・関西万博」のアート&建築ファン必見スポットもあわせてチェックしほしい。
会場:大阪・関西万博会場内、大阪文化館・天保山(旧サントリーミュージアム)・ベイエリア 、中之島エリア(大阪国際会議場)、船場エリア、西成エリア、JR大阪駅エリア、松原市ほか
会期:4月13日~10月13日
※会場などにより会期が異なります
2020年の開館から弘前れんが倉庫美術館の5周年を記念して開催される展覧会。同館は、弘前や津軽地方の固有な風土、歴史、民俗、文化に深く根ざしながら、新たな価値の創造を目指してコミッション・ワークを収蔵収蔵してきた。本展では、これまでに蓄積されたコレクションを軸に、未来を担う現代作家たちの表現を一堂に紹介する。参加作家には、川内理香子、SIDE CORE、工藤麻紀子、松山智一、畠山直哉、小林エリカ、田村友一郎、藤井光、大巻伸嗣、奈良美智らが名を連ね、地域性と普遍性が交差する多彩な作品群が展開される。レポートはこちら。
会場:弘前れんが倉庫美術館
会期:4月4日〜11月16日
オーストリア出身のアーティスト、エルヴィン・ヴルムの日本初個展。彫刻を学んだヴルムは、石膏や金属などの伝統的な彫刻にとどまらず、写真や映像、絵画といった多様なメディアを用いて、彫刻の概念を拡張している。身の回りの日用品を使い、社会に存在する規範や制度、権力の構造をユーモラスに炙り出し、作品を通じて鑑賞者に様々な問いを投げかける。本展では、最新作《学校》を初公開する。レポートを公開中。
会場:十和田市現代美術館
会期:4月12日〜11月16日
南仏アルルで制作された《ヴィゲラ運河にかかるグレーズ橋》(1888)、最晩年にフランスのオーヴェール=シュル=オワーズで制作された《アザミの花》(1890)をはじめ、3点のフィンセント・ファン・ゴッホ作品を収蔵しているポーラ美術館。開館以来初のゴッホをテーマにした展覧会となる本展では、ゴッホの作品や存在が様々な時代や地域に与えたインパクトを検証するとともに、現代における新たな価値を考察する。
会場:ポーラ美術館
会期:5月31日〜11月30日
日本を含むアジア地域の現代アートに特化した新たな美術館が、ベネッセアートサイト直島に誕生する。同館は直島における10番⽬の安藤忠雄設計のアート施設となる。記念展示の参加作家には、会田誠、マルタ・アティエンサ、蔡國強、Chim↑Pom from Smappa!Group、ヘリ・ドノ、インディゲリラ、村上隆、N・S・ハルシャ、サニタス・プラディッタスニー、ソ・ドホ、パナパン・ヨドマニーら名を重ねる。レポートはこちら。
会場:直島新美術館
会期:5⽉31⽇〜未定
20世紀前半の激動の時代、海外で成功と挫折を経験したふたりの日本人画家、藤田嗣治と国吉康雄。それぞれフランスとアメリカに渡ったふたりは、その地で画家としての地位を確立した。パリとニューヨークで交流を重ねた両者であったが、太平洋戦争の勃発により、その立場は大きく分かたれることとなる。本展では、海外で成功と挫折を経験したふたりの作品を画期となる時代ごとに展示する。
会場:兵庫県立美術館
会期:6月14日〜8月17日
これまでほとんど注目されていないもの、一部の研究者は熱心に研究しているものの、一般の方々にはほとんど知られていないものなど、「知られざる鉱脈」としての日本美術に光を当てる企画。伊藤若冲ら「奇想の画家」の作品が集結するほか、縄文土器から現代アートまで広く紹介される。詳細はニュースをチェック。
会場:大阪中之島美術館
会期:6月21日~8月31日
戦争や原爆の記憶と美術表現の関係に光を当てる本展は、戦中・戦後の銅像やモニュメントの変遷を通じて、記憶の形成や再構成のあり方を考察する。ミュージアムやアーカイヴといった記憶にかかわる制度・媒体に注目し、現代アーティストによる試みも紹介。過去と現在の対話的なつながりを見つめ、表現を通じた記憶の継承について問い直す。館蔵の「ヒロシマ」関連作品も交え、戦争の記憶と向き合うための思索の場をひらく。ニュースはこちら。
会場:広島市現代美術館
会期:6月21日〜9月15日
「だんご3兄弟」「ピタゴラスイッチ」「バザールでござーる」などで知られる佐藤雅彦の、約40年にわたる創作活動を初めて総覧する世界初の大規模個展。広告、音楽、教育番組、ゲームといったジャンルを横断する代表作に加え、制作の裏にある思考や理論にも迫る。見る者は、「知っている」作品の数々を手がかりに、「伝える」ことへの新たな視点を得る。ニュースはこちら。
会場:横浜美術館
会期:6月28日〜11月3日
アムステルダムのファン・ゴッホ美術館には、画家フィンセント・ファン・ゴッホの約200点の油彩や500点にのぼる素描をはじめ、手紙や関連作品、浮世絵版画などが所蔵されている。そのほとんどは1973年の開館時に、フィンセント・ファン・ゴッホ財団が永久貸与したものだ。本展では、ファン・ゴッホ美術館の作品を中心に、ファン・ゴッホの作品30点以上に加え、日本初公開となるファン・ゴッホの手紙4通なども展示し、家族が守り受け継いできたコレクションを紹介する。なお本展は巡回展であり、東京都美術館で9月12日〜12月21日、愛知県美術館で2026年1月3日〜3月23日に開催予定。詳細はニュースをチェック。
会場:大阪市立美術館
会期:7月5日~8月31日
気鋭の作家によるインスタレーションを紹介する展示シリーズ「scopic measure」の第17弾として、ベルリンを拠点とするアーティスト、マヤ・エリン・マスダによる個展が開催される。本展では、放射線による皮膚の変容や汚染に晒された動物・土地の変化をテーマとした新作を中心に、過去作《Pour Your Body Out》(2023年)などを展示。現代社会が直面する環境問題を、身体性の視座からとらえ直す意欲的な試みとなる。
会場:山口情報芸術センター
会期:7月5日〜11月2日
1854年の創業以来、革新とスタイルを組み合わせた独自のデザインを提供し続けてきたルイ・ヴィトン。その創業170周年と大阪・関西万博を記念して行われる本展は、メゾンの歴史や日本との関係に焦点を当てるもの。展覧会では、メゾンの先駆的な精神と創業者ルイ・ヴィトンが生み出した「旅の真髄」を物語り、卓越した匠の技や創造性、イノベーションにインスパイアされた没入型の旅へと来場者を誘う。メゾンの原点から最新クリエーションまでの軌跡を描き、日本との長きにわたる関係にオマージュを捧げる内容になる。ニュースはこちら。
会場:大阪中之島美術館
会期:7月15日〜9月17日
開館20周年と被爆80年という節目を迎える長崎県美術館による、戦争をテーマとした特別展。スペイン美術を標榜する同館は、収蔵するフランシスコ・デ・ゴヤの版画集『戦争の惨禍』を中心に据え、戦争の真の姿とその本質を問い直す。プラド美術館からゴヤの油彩画、ソフィア王妃芸術センターからスペイン内戦期に制作されたピカソの版画が出品されるほか、国内美術館が所蔵する戦争・原爆関連作品が一堂に会する。
会場:長崎県美術館
会期:7月19日~9月7日
1988年に宇和島市に活動の拠点を移し、35年にわたって同地で制作を続けている大竹伸朗の大規模個展。同館での個展は、2013年「大竹伸朗展 ニューニュー」以来12年ぶり。今回は活動の初期段階から取り組んできた「網膜」を通奏低音とし、シリーズの新作・未公開を中心に、さらに「網膜」に接続する多様な作品群を谷口吉生建築の空間を生かして展覧する。様々な関連プログラムも実施予定。ニュースはこちら。
会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
会期:8月1日〜11月24日
15年目の節目を迎える「瀬戸内国際芸術祭」は、春・夏・秋会期にわけて計107日間にわたって開催。ジャッガイ・シリブート、プ・ジヒョン、雲門舞集ら21の国と地域から計63組のアーティストが参加する。また新規にニュージーランドやスウェーデンと連携を図り、ニュージーランドからは「第60回ヴェネチア・ビエンナーレ」で金獅子賞を受賞した「マタホ・コレクティブ」のメンバーでもあるサラ・ハドソンが参加。さらに芸術祭の連携プロジェクトとして、開催地域の8つの美術館が日本人アーティストの展覧会を行う。春会期のレポートを公開中。
会場:高松港、瀬戸内の島々と沿岸部
会期:夏会期8月1日〜8月31日、秋会期10月3日〜11月9日
思想家の柳宗悦、陶⼯の河井寬次郎、濱⽥庄司が京都に集うことで始まった「⺠藝」運動。誕生から100年という節目を迎える本年、京都において、日本の近代化のなかで一般大衆にも広がった民藝運動の無名性、簡潔性、そして単純さに美を見出す精神を考察する展覧会が開催される。「民藝」という言葉が誕生するきっかけとなった木喰仏を始め、黒田辰秋、青田五良の作品、「民藝館」や「三國荘」のために制作された河井寬次郎、濱田庄司、バーナード・リーチらの工芸作品、柳宗悦らによる日本全国の蒐集品や、芹沢銈介、棟方志功の作品も紹介される。
会場:京都市京セラ美術館
会期:9⽉13⽇〜12⽉7⽇
2010年から3年ごとに開催されたきた「あいちトリエンナーレ」のタイトルを改め、今回から国際芸術祭「あいち2025」として行われる本芸術祭。『ArtReview』が毎年選出する「Power 100」で2024年の1位に選出されたフール・アル・カシミが芸術監督を務める。テーマは、モダニズムの詩人アドニスによる詩から着想を得て構想された「灰と薔薇のあいまに」。ダラ・ナセル、沖潤子、小川待子、アドリアン・ビシャル・ロハスをはじめ、約50組のアーティストが参加する予定だ。詳細はニュースをチェック。
会場:愛知芸術文化センター、愛知県陶磁美術館、瀬戸市のまちなか
会期:9月13日〜11月30日
「BIWAKOビエンナーレ」は、滋賀県の琵琶湖を中心に広がる、近江八幡旧市街、沖島、彦根市街地、鳥居本などの複数会場を舞台に、国内外のアーティストが展示を行うアートイベント。長年放置されている空き家や古民家を会場として活用することで古き良き建築の魅力を再発見し、後世につなぐ「地域再生」も目的のひとつ。歴史と伝統が根付いた街に点在する会場を巡りながら、作品とともに地域の文化や風土に触れることができる。2025年度のテーマは「流転〜FLUX」となり、開催までに様々なプレイベントも行われている。
会場:滋賀県近江八幡旧市街地、沖島、彦根市街地、彦根城、鳥居本など
会期:9月20日〜11月16日
フィンセント・ファン・ゴッホのコレクションで世界的に有名なオランダのクレラー=ミュラー美術館が所蔵するファン・ゴッホの優品約60点などからなる展覧会。ファン・ゴッホの名作《夜のカフェテラス(フォルム広場)》(1888)が、2005年以来、約20年ぶりに来日する。その後、福島県立美術館(2026年2月21日~5月10日)、上野の森美術館(2026年5月29日~8月12日)に巡回予定。ニュースはこちら。
会場:神戸市立博物館
会期:9月20日~2026年2月1日
3年に1度、岡山市中心部で開催される国際現代美術展。フィリップ・パレーノがアーティスティック・ディレクターを務め、タイトルは村上春樹の小説『1Q84』の触発されてつけられたという「青豆の公園」となる。参加ゲストには、中田英寿、ハンス・ウルリッヒ・オブリスト、プレシャス・オコヨモン、ティノ・セーガル、島袋道浩、リアム・ギリックら30組が名を連ねる。今回は、これまで無料だった屋外展示に揃え、原則有料だった屋内展示も含め、すべての会場を鑑賞料無料とする異例の試みを行う。詳細はニュースをチェック。
会場:岡山城・岡山後楽園周辺エリア
会期:9月26日~11月24日
1950から60年代の日本の女性美術家による創作を「アンチ・アクション」というキーワードから再評価する展覧会。本展では、中嶋泉による『アンチ・アクション』(2019)のジェンダー研究の観点を足がかりに、草間彌生、田中敦子、福島秀子をはじめとする14名の作家による約100点の作品を紹介する。男性中心的な美術史の語りに異議を唱え、女性美術家たちの多様な表現を通して、戦後日本美術の新たな側面を浮き彫りにする。東京国立近代美術館(12月16〜2026年2月8日)、兵庫県立美術館(2026年2月28日~5月6日)に巡回。
会場:豊田市美術館
会期:10月4日〜11月30日
3年に1度、広島県福山市・尾道市を中心に行われる建築文化の祭典として、2025年に初開催される「ひろしま国際建築祭」。今回は、「つなぐ——『建築』で感じる、私たちの“新しい未来” 」をテーマに据え、プリツカー賞を受賞した9人の日本の建築家に焦点を当てる展覧会や、丹下健三の自邸を再建するプロジェクトにまつわる展示などが企画されている。また、文化財指定されている古建築や、通常は非公開の現代建築を特別に一般公開するオープン・アーキテクチャーも開催される。ニュースを公開中。
会場:ふくやま美術館、iti SETOUCHI、尾道市立美術館、LOG、神勝寺禅と庭のミュージアム、ONOMICHI U2、瀬戸内海周辺のサテライト会場ほか
会期:10月4日〜11月30日
ストリートカルチャーを切り口に「公共空間における表現の拡張」をテーマに活動するアートチーム、SIDE CORE。本展では、彼らが2024年度に同館のアーティスト・イン・レジデンスプログラムに参加し、金沢市内および能登半島でリサーチや作品制作を行った成果を展示する。2024年1月1日に発生した能登半島地震を契機に行われた能登半島でのリサーチは、震災がもたらした土地の変化への理解を深めることを目的としていた。展覧会では、「危機に対してアートは何ができるのか」という根源的な問いに挑戦し、SIDE COREの公共空間に対する独自の視点と、芸術がどのように社会に対して新たなバイパス(抜け道)としての可能性をもたらすのかを紹介する。
会場:金沢21世紀美術館
会期:10月18日〜2026年3月15日
20世紀を代表する建築家・磯崎新の回顧展では、作品模型、スケッチ、インスタレーション、絵画、映像などの様々なメディアを通じ、彼の思考の軌跡を辿る。磯崎の建築の枠を超えた文化的・思想的活動を総体的に見ることができる。
会場:水戸芸術館 現代美術ギャラリー
会期:11月1日~2026年1月25日(仮)
杉⼾洋による北東北初の個展。1990年代から最新作までの杉⼾作品を紹介しながら、グラフィックデザイナーの服部⼀成との協働で、時代の精神を振り返る展覧会となる。
会場:弘前れんが倉庫美術館
会期:12⽉5⽇〜2026年5⽉17⽇
1924年にアンドレ・ブルトンが定義づけた動向であるシュルレアリスム(超現実主義)。当初は文学における傾向として起こり、やがてオブジェや絵画、写真・映像といった視覚芸術をはじめ、広告やファッション、インテリアなど幅広い展開を見せた。本展では、「表現の媒体」をキーワードにシュルレアリスムを解体し、シュルレアリスム像の再構築を目指す。
会場:大阪中之島美術館
会期:12月13日〜2026年3月8日
カナダ出身のジャネット・カーディフは、世界各地で個展や国際展への参加を重ねる、現代を代表するアーティストのひとり。本展では、そのキャリアのなかでも重要な作品と位置付けられているサウンドインスタレーション《40声のモテット》が紹介される予定だ。
会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
会期:12月13日〜2026年2月15日
アーティストは美術を通じて、日常が抱える諸問題や世界の根源的真理への気づきをもたらす存在であると言える。本展では、グローバル化の進展により日本人作家の海外発表機会が拡大した1990年代以降の現代美術を中心に、同館のコレクションから導き出される複数のテーマに基づき、国内作家の実践を紹介する。
会場:京都国立近代美術館
会期:12月20日~2026年3月8日