近年、西洋美術やデザインにつぐ人気展覧会ジャンルとしての位置を確立しつつあるファッション。きらびやかなドレスや、かわいいが詰まったジュエリー、技巧の詰まった染織品など、うっとりするような見た目と奥深い背景が多層的に折り重なる作品群は、時代や場所を超えて人びとを惹きつける。
本年は、アール・デコ100周年の節目なこともあり、ファッション・テキスタイルに関連する見逃せない展覧会が全国各地で開催中。ここでは人気TOP3とあわせてテーマ別に紹介する。
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シャネルの「メティエダール(芸術的な手仕事)」を支える工房が集まるパリの施設、le19Mによる特別展示。2023年のセネガル・ダカール以来、2回目の国際プロジェクトとなる今回の展示は、森アーツセンターギャラリーと東京シティビューを舞台に、かつてない規模で開催される。日本の文化と新たなつながりを生み出すことも目指し、会場では、建築家の田根剛率いるATTAの空間デザインにより、le19Mのメゾンダールが誇る独自のノウハウを紹介するほか、メゾンダールと日本の職人技の卓越したクリエイションを紹介するグループ展も行われている。レポートはこちら。
会場:森アーツセンターギャラリー、東京シティビュー
会期:9月30日〜10月20日
2025年に創設30周年を迎えたファッション・テキスタイルブランド、ミナ ペルホネン。展覧会タイトルの“つぐ”という言葉は、水面に起こる波紋のようなイメージだという。創設者でデザイナーの皆川明が落としたミナ ペルホネンの活動という一雫は、共鳴する人々をつなぎ、手技を生み、新たなクリエイションへとその波紋を広げてきた。本展ではそんなミナ ペルホネンのものづくりに通じる様々な"つぐ"のかたちを紹介する。ニュースはこちら。
会場:世田谷美術館
会期:11月22日〜2026年2月1日
旧朝香宮邸の設計や装飾に多大な影響を与えたパリの「アール・デコ博覧会」の開催100周年を記念する展覧会。フランスを代表する宝飾メゾン「ヴァン クリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels)」の作品から、アール・デコ博覧会の宝飾部門でグランプリを受賞した《絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット》をはじめ、歴史的価値が認められる「パトリモニー コレクション」より厳選された名品が一堂に会し、アール・デコの魅力を伝える。レポートはこちら。
会期:東京都庭園美術館
会期:9月27日~2026年1月18日
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1920年代に世界を席巻した装飾様式「アール・デコ」は、服飾の世界にも広がりをもたらした。パリで開催された「アール・デコ博覧会」から100周年の節目にあたり、本展では京都服飾文化研究財団(KCI)が所蔵する服飾作品約60点を中心に展示する。さらに、国内外の美術館所蔵の絵画、版画、工芸品なども加え、現代にも影響を与え続ける100年前の「モード」の魅力と革新性を多角的にひもとく。
会場:三菱一号館美術館
会期:10月11日〜2026年1月25日
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2025年は、1925年にパリで開催された現代産業装飾芸術国際博覧会が100周年を迎える年。装飾芸術に焦点を当てたこの博覧会は「アール・デコ博」と呼ばれ、以降アメリカをはじめとする諸外国に国際的な影響をおよぼした。本展では、アール・デコと呼ばれる様式のなかでも、とくに女性と関わりの深いデザイン作品にフォーカスし、当時のグラフィック、ファッション、ジュエリー、香水瓶、乗用車などを紹介。100年前の「理想的な女性」像を振り返り、そのデザイン諸相を再発見する展覧会となる。ニュースはこちら。
会場:大阪中之島美術館
会期:10月4日〜2026年1月4日
ローマを代表するジュエリーブランド、ブルガリが、日本で10年ぶりとなる過去最大規模の展覧会を開催。色彩・文化・技巧に焦点を当て、貴重な個人コレクションを含む約350点のジュエリーがメゾンの歴史を彩る。タイトル「カレイドス」は、ギリシャ語で「美しい(カロス)」と「形態(エイドス)」を意味し、美と創造性が調和するダイナミックな色彩世界の旅を象徴する。ブルガリ・ヘリテージ・コレクションに共鳴する、森万里子、ララ・ファヴァレット、中山晃子による現代アート作品も展示されていた。レポートはこちら。
会場:国立新美術館
会期:9月17日〜12月15日
アール・ヌーヴォーとアール・デコの時代に活躍し、ジュエリーとガラスの両分野で足跡を残したルネ・ラリック。19世紀末から20世紀初頭、独創的なジュエリー作家としてフランス国外にもその名を知らしめていたが、彼が手がけた作品は幅広く、飾り襟やハンドバッグなど多様な服飾品を数多く残している。また、本展では、ドレスにラリック作品の着装を初めて行い、ファッションにおけるラリックのリアリティーにも迫る。ニュースはこちら。
会場:箱根ラリック美術館
会期:3月22日〜11月30日
精神科病院で看護師として働くかたわらでデザインを学んだファッションデザイナー、津野青嵐。3Dペンで描くように制作した樹脂製のドレスで国際的な注目を集めた後、「浦河べてるの家」での勤務を経て、現在は大学院で身体に関する当事者研究を行っている。本展では、服作りを通して精神・身体との付き合い方を模索してきた津野の実践を、新作を含む作品やワークショップを通じて紹介する。
会場:金沢21世紀美術館
会期:10月18日〜2026年3月22日
永澤陽一は、1980年代よりファッションデザイナーとして活動。パリでTOKIO KUMAGAIのチーフデザイナーを務めた後に、独立して自身のブランドYOICHI NAGASAWAをスタートした。特殊素材などのテクノロジーを取り入れながら、独自の世界を創造し人々を驚かせ続けた永澤は、「無印良品」や「AEON」の服飾部門のプロデュースを手がけるなど、その手腕を多方面で発揮している。本展では、同館に寄贈されたブランド発足当初からの作品の数々を展示。その稀有な発想の源流と創造性に焦点を当て、次世代のクリエイティビティを刺激する。
会場:神戸ファッション美術館
会期:9月13日〜11月9日
19世紀末から20世紀初頭のウィーンにおける優れたデザインや装飾がみられる家具や工芸作品などのモダンな作品群、またそれらの近代的なスタイルのルーツのひとつであるビーダーマイヤー時代の工芸作品を紹介。銀器、陶磁器、ガラス、ジュエリー、衣装、インテリアなど、このふたつの時代に制作された工芸とデザインを通して、ウィーンにおける「総合芸術」の精神を明らかにする。また、これまで日本ではあまり知られてこなかった女性の先駆的なデザイナー・クリエイターにも焦点を当てる。レポートはこちら。
会場:パナソニック汐留美術館
会期:10月4日〜12月17日
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アンドレ・ブルトンが定義づけ、近現代の美術に大きな影響を及ぼしたシュルレアリスムは、広告やファッション、インテリアなどをはじめとする生活空間にも広がりをもたらしていた。本展では、日本国内に所蔵されているシュルレアリスムの思想に影響を受けた名品が集結。圧倒的存在感をもって視覚芸術、ひいては社会全体へと拡大した思想運動を表現の媒体というキーワードのもと解体し、シュルレアリスム像の再構築を目指す。
会場:大阪中之島美術館
会期:12月13日〜2026年3月8日
日本やオリエントとの邂逅をひとつの契機として西欧で発展したアール・ヌーヴォー、アール・デコ様式は、20世紀初頭に進取のモードとして貪欲に取り入れられ、大正ロマンや昭和モダンといった独自のモードを生み出した。本展は、現代デザインの礎といえる、大正から昭和にかけてのデザイン実践を紹介。アール・ヌーヴォー、アール・デコのエッセンスを日本固有の感性と融合させた工芸からファッションまで、時代を鮮やかに彩った"ロマンティック・モダン"の諸相を明らかにする。
会場:岐阜県美術館
会期:11月15日〜2026年2月15日
島根県出身の世界的ファッションデザイナー、森英恵の没後初となる大規模展覧会。戦後の高度経済成長期の日本において、映画衣装の制作を通じて頭角を現した森。家庭を持ちながら社会的にも大きな仕事を成し遂げるその姿は、新しい女性像として注目された。本展では、森英恵の生き方とものづくりの哲学を、オートクチュールのドレスや写真、資料など約400点の作品を通してひもといていく。また、本展は東京・国立新美術館への巡回を予定(会期:2026年4月15日〜7月6日)。レポートはこちら。
会場:島根県立石見美術館
会期:9月20日〜12月1日
数千年の歴史を持つインド更紗の魅力を探る展覧会。主要な交易品として更紗は1世紀に東南アジアやアフリカに伝わり、17世紀の東インド会社設立とともに世界各国へ輸出され、装飾美術から服飾まで幅広い分野に影響を与えた。本展では最長約8mの完全な形で残る優品から、アジア・ヨーロッパとの交易で生まれたデザイン、日本での展開を伝える作品まで紹介する。世界屈指のコレクター、カルン・タカールのコレクションを日本で初めて公開し、現在もなお人々を魅了し続けるインド更紗の奥深い世界を展観する。
会場:東京ステーションギャラリー
会期:9月13日〜11月9日
ミューぽんで100円OFF!
2024年に101歳で亡くなった染色家の柚木沙弥郎。柳宗悦らによる民藝運動に出会い、芹沢銈介のもとで染色家としての道を歩み始めた柚木は、さらに挿絵やコラージュなどジャンルの垣根を超えて自身の創作世界を豊かに広げた。本展は、柚木の75年におよぶ活動を振り返るとともに、制作において縁のあった都市や地域をテーマに加えて、柚木を巡る旅へと誘う内容になるという。民藝を出発点に、人生を愛し、楽しんだ柚木の創作活動の全貌を堪能できる展覧会となる。
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
会期:10月24日〜12月21日