7〜8月の夏休み期間に、全国各地の美術館や博物館、ギャラリー等で開催されている、注目の展覧会をエリア別に紹介。気になる展覧会を見つけて、夏の予定づくりに役立ててほしい。
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*各展覧会の会期・内容は予告なく変更になる場合があるため、お出かけ前には公式ウェブサイトをご確認ください。
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「ピタゴラスイッチ」「バザールでござーる」「だんご3兄弟」「スコーン」「モルツ」「ポリンキー」「I.Q Intelligent Qube」「0655/2355」など、現代の日本で生活する者にとってどれもお馴染みのCMや作品の数々を生み出してきた佐藤雅彦。その約40年の歩みを振り返りつつ、その作品の裏側にある方法論を見せるという、これまでにない展覧会だ。レポートはこちら。
会場:横浜美術館
会期:6月28日〜11月3日
アムステルダムのファン・ゴッホ美術館には、画家フィンセント・ファン・ゴッホの約200点の油彩や500点にのぼる素描をはじめ、手紙や関連作品、浮世絵版画などが所蔵されている。そのほとんどは1973年の開館時に、フィンセント・ファン・ゴッホ財団が永久貸与したものだ。本展では、ファン・ゴッホ美術館の作品を中心に、ファン・ゴッホの作品30点以上に加え、日本初公開となるファン・ゴッホの手紙4通なども展示し、家族が守り受け継いできたコレクションを紹介する。なお本展は巡回展であり、東京都美術館で9月12日〜12月21日、愛知県美術館で2026年1月3日〜3月23日に開催予定。ニュースはこちら。
会場:大阪市立美術館
会期:7月5日〜8月31日
1988年に宇和島市に活動の拠点を移し、35年にわたって同地で制作を続けている大竹伸朗の大規模個展。同館での個展は、2013年「大竹伸朗展 ニューニュー」以来12年ぶり。今回は活動の初期段階から取り組んできた「網膜」を通奏低音とし、シリーズの新作・未公開を中心に、さらに「網膜」に接続する多様な作品群を谷口吉生建築の空間を生かして展覧する。様々な関連プログラムも実施予定。ニュースはこちら。
会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
会期:8月1日〜11月24日
明治政府が国の威信をかけて参加した1873年のウィーン万国博覧会。精巧な美術工芸品を中心に地域の物産を出品したことで、日本はいちやく国際社会へと躍り出た。ウィーン万博において北海道の先住民族アイヌの資料は、同地域における「固有」の物産として体系的に収集されており、本展では日本にとって近代化と国際化の象徴であるウィーン万博を起点とした、アイヌ・コレクションの形成とその時代背景が紹介される。
会場:国立アイヌ民族博物館
会期:7月5日〜11月16日
オーストリア出身のアーティスト、エルヴィン・ヴルムの日本初個展。彫刻を学んだヴルムは、石膏や金属などの伝統的な彫刻にとどまらず、写真や映像、絵画といった多様なメディアを用いて、彫刻の概念を拡張している。身の回りの日用品を使い、社会に存在する規範や制度、権力の構造をユーモラスに炙り出し、作品を通じて鑑賞者に様々な問いを投げかける。本展では、最新作《学校》を初公開する。レポートはこちら。
会場:十和田市現代美術館
会期:4月12日〜11月16日
2020年の開館以来、精力的に国内外の先進的なアーティストを紹介し続けている弘前れんが倉庫美術館。その開館5周年記念展は、同館が歩んだこれまでの5年間をたどりながら、未来のユートピアについて考えるきっかけとなるような展覧会だ。奈良美智、小林エリカらをはじめとした現代アーティストが手がける、弘前や津軽固有の風土、歴史、⺠俗、文化に根差したコミッション・ワークにも数多く触れることができる。レポートはこちら。
会場:弘前れんが倉庫美術館
会期:1期:4月4日〜7月7日、2期:7月11日〜11月16日
全世界で絶大な人気を誇る『ポケットモンスター』シリーズと工芸作家のコラボレーション展。2023年3月~6月に石川・国立工芸館で行われたのち、アメリカや日本各地の巡回を経て青森で開催されている。ポケモンと工芸が出会ったらどんな「かがく反応」が起きるのか? この問いに人間国宝から若手まで20名のアーティストが挑んだ。ポケモンの姿かたちや仕草、気配などを呼び起こす作品や、進化や旅の舞台、技などゲームの記憶を辿る作品、日々を彩る器や着物などに誘い込まれたポケモンたちなど、多様な作品が一堂に会する。東京・麻布台ヒルズギャラリーで開催された本展のレポートはこちら。
会場:八戸市美術館
会期:6月28日〜8月31日
Nerhol(ネルホル)は、グラフィックデザイナーの田中義久と彫刻家の飯田竜太によるアーティストデュオ。連続写真や映像から抽出した画像の出力紙の束を彫り刻む独自の制作手法を基軸としつつ、その観測範囲を他者や他領域と接合し、時空間を超えた因果関係の複雑な絡み合いや、不可視化された物語までも語りうる豊かな表現へと深化させてきた。新作・未発表作を中心に構成する本展は、彼らの多層的な探究の現在地と表現言語の新たな展開を目撃する機会となる。
会場:埼玉県立近代美術館
会期:7月12日〜10月13日
1980年代前半、ダンボール作品で公募展の大賞を立て続けに受賞し一躍時代の寵児となった日比野克彦。90年代にはかたちのないものの表現を模索し、2000年代にはアートプロジェクトへと舵を切り、2010年代以降は美術館館長や大学学長として美術を社会に結びつける実践を展開している。本展では複数のフィールドを横断する日比野を、関わる人々の視点から深掘りする。絵本や漫画を織り交ぜながら紹介し、手つきや振る舞いに着目することで、拡張してやまない芸術実践に通底するものを探る。
会場:水戸芸術館 現代美術ギャラリー
会期:7月19日〜10月5日
南仏アルルで制作された《ヴィゲラ運河にかかるグレーズ橋》(1888)、最晩年にフランスのオーヴェール=シュル=オワーズで制作された《アザミの花》(1890)をはじめ、3点のフィンセント・ファン・ゴッホ作品を収蔵しているポーラ美術館。開館以来初のゴッホをテーマにした展覧会となる本展では、ゴッホの作品や存在が様々な時代や地域に与えたインパクトを検証するとともに、現代における新たな価値を考察する。レポートはこちら。
会場:ポーラ美術館
会期:5月31日〜11月30日
建築界でもっとも栄誉ある賞のひとつ、プリツカー賞を2024年に受賞した山本理顕。彼の過去最大規模の展覧会が、代表作である横須賀美術館で開催される。山本は建築におけるパブリックとプライベートの境界を「閾(しきい)」と呼び、地域社会とのつながりを生む空間として重要視してきた。本展では、50年にわたる設計活動を、およそ60点の模型や図面、スケッチ、ドローイングを通して紹介し、活動の軌跡とその背景に迫る。
会場:横須賀美術館
会期:7月19日〜11月3日
浮世絵最盛期の立役者であった蔦屋重三郎。本展ではその功績がわかる蔦重出版の歌麿・写楽の錦絵をはじめ、天明・寛政期から文化・文政期に活躍した鳥文斎栄之、歌川豊国、葛飾北斎といった絵師たちの錦絵や肉筆美人画を展観する。歌麿が「恋」をテーマに、年齢や境遇が異なる女性の姿を描き出したシリーズ「歌撰恋之部」や、写楽作品の代表作《市川鰕蔵の竹村定之進》などの作品が展示される。さらに蔦重の生まれ育った江戸の名所を独自に取材し、現在の風景写真とともに比較展示することで、江戸の町人文化の賑わいとともに花開いた「黄金期」の浮世絵の魅力を紹介する。
会場:MOA美術館
会期:7月25日〜9月9日
印象派を代表する画家のひとりであるクロード・モネ(1840〜1926)は、一瞬の光をとらえる鋭敏な眼によって、自然の移ろいを画布にとどめた。本展では、世界最大のモネ・コレクションを所蔵するパリのマルモッタン・モネ美術館より、日本初公開作品を含むおよそ50点が来日。さらに日本各地に所蔵される作品も加え、モネ晩年の芸術の極致を紹介。日本では過去最大規模の「睡蓮」が集う貴重な機会となる。国立西洋美術館で開催された本展のレポートはこちら。
会場:豊田市美術館
会期:6月21日〜9月15日
ポストモダン以降、絵画は従来のタブローとしての絵画から脱却し、絵画それ自体をメディウム化する方向へと展開してきた。オブジェを組み合わせてイリュージョンを排除するような絵画、空間全体を取り込むような絵画、作者が架空と実在を行き来するような絵画、現実と虚構に揺さぶりをかける絵画、パフォーマンスや映像を組み合わせた絵画、絵画それ自体の存在を問うような絵画などの取り組みは、現実の世界と深いつながりを結んでいる。本展では、対極する戦後ドイツの画家、ゲルハルト・リヒターとアンゼルム・キーファーを起点に、絵画における表現の可能性を探究し、それぞれの手法や視点から独自の「絵画」に取り組むアーティストの作品が集結する。レポートはこちら。
会場:金沢21世紀美術館
会期:4月29日〜9月28日
アメリカ西海岸で最初期に収集された充実した西洋絵画のコレクションを有するサンディエゴ美術館と、東アジアにおいて唯一の体系的な西洋絵画のコレクションを持つ国立西洋美術館。本展では、両館の所蔵品から88点を掛け合わせ、ルネサンスから19世紀印象派までの600年にわたる西洋美術の歴史をたどりながら、「作品をどのように見るとより楽しめるか」を提案する。関連する作品をペアや小グループごとに展示、比較することで、鑑賞者が様々な角度から絵画が持つストーリーを深掘りできるよう誘導する。国立西洋美術館で開催された本展のレポートはこちら。
会場:京都市京セラ美術館
会期:6月25日〜10月13日
現在も世界の美術館や芸術祭で作品が紹介され、注目を集め続けている草間彌生。アイテムだけでなく、店舗そのものもドットで覆ったルイ・ヴィトンとのコラボレーションでも話題を呼んだ。本展は、東京、ミュンヘン、ヴェネチア、北京、ソウル、大阪のエスパス ルイ・ヴィトンにてフォンダシオン ルイ・ヴィトンの所蔵コレクションを公開する「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムの一環で実施されるもの。草間によるインスタレーションや絵画など、国際的なアートシーンに登場した初期から近年の作品までが展示される。ニュースはこちら。
会場:エスパス ルイ・ヴィトン大阪
会期:7月16日〜2026年1月12日
1854年の創業以来、革新とスタイルを組み合わせた独自のデザインを提供し続けてきたルイ・ヴィトン。その創業170周年と大阪・関西万博を記念して行われる本展は、メゾンの歴史や日本との関係に焦点を当てるもの。展覧会では、メゾンの先駆的な精神と創業者ルイ・ヴィトンが生み出した「旅の真髄」を物語り、卓越した匠の技や創造性、イノベーションにインスパイアされた没入型の旅へと来場者を誘う。メゾンの原点から最新クリエーションまでの軌跡を描き、日本との長きにわたる関係にオマージュを捧げる内容になる。ニュースはこちら。
会場:大阪中之島美術館
会期:7月15日〜2025年9月17日
20世紀前半の激動の時代、海外で成功と挫折を経験したふたりの日本人画家、藤田嗣治と国吉康雄。それぞれフランスとアメリカに渡ったふたりは、その地で画家としての地位を確立した。パリとニューヨークで交流を重ねた両者であったが、太平洋戦争の勃発により、その立場は大きく分かたれることとなる。本展では、海外で成功と挫折を経験したふたりの作品を画期となる時代ごとに展示する。レポートはこちら。
会場:兵庫県立美術館
会期:6月14日〜8月17日
戦争や原爆の記憶と美術表現の関係に光を当てる本展は、戦中・戦後の銅像やモニュメントの変遷を通じて、記憶の形成や再構成のあり方を考察する。ミュージアムやアーカイヴといった記憶にかかわる制度・媒体に注目し、現代アーティストによる試みも紹介。過去と現在の対話的なつながりを見つめ、表現を通じた記憶の継承について問い直す。館蔵の「ヒロシマ」関連作品も交え、戦争の記憶と向き合うための思索の場をひらく。レポートはこちら。
会場:広島市現代美術館
会期:6月21日〜9月15日
気鋭の作家によるインスタレーションを紹介する展示シリーズ「scopic measure」の第17弾として、ベルリンを拠点とするアーティスト、マヤ・エリン・マスダによる個展が開催される。本展では、放射線による皮膚の変容や汚染に晒された動物・土地の変化をテーマとした新作を中心に、過去作《Pour Your Body Out》(2023年)などを展示。現代社会が直面する環境問題を、身体性の視座からとらえ直す意欲的な試みとなる。
会場:山口情報芸術センター
会期:7月5日〜11月2日
日本を含むアジア地域の現代アートに特化した新たな美術館が、ベネッセアートサイト直島に誕生。同館は直島における10番⽬の安藤忠雄設計のアート施設となる。記念展示の参加作家には、会田誠、マルタ・アティエンサ、蔡國強、Chim↑Pom from Smappa!Group、ヘリ・ドノ、インディゲリラ、村上隆、N・S・ハルシャ、サニタス・プラディッタスニー、ソ・ドホ、パナパン・ヨドマニーらが名を重ねる。レポートはこちら。
会場:直島新美術館
会期:5月31日〜終了日未定
15年目の節目を迎える「瀬戸内国際芸術祭」は、春・夏・秋会期にわけて計107日間にわたって開催。ジャッガイ・シリブート、プ・ジヒョン、雲門舞集ら21の国と地域から計63組のアーティストが参加する。また新規にニュージーランドやスウェーデンと連携を図り、ニュージーランドからは「第60回ヴェネチア・ビエンナーレ」で金獅子賞を受賞した「マタホ・コレクティブ」のメンバーでもあるサラ・ハドソンが参加。さらに芸術祭の連携プロジェクトとして、開催地域の8つの美術館が日本人アーティストの展覧会を行う。春会期のレポートはこちら。
会場:高松港、瀬戸内の島々と沿岸部
会期:夏会期8月1日〜8月31日、秋会期10月3日〜11月9日
小沢剛は、純粋芸術とそれ以外のものの境界に関心を寄せ、歴史や社会にユーモアと批評精神を交えて様々な問いを投げかける作品で国内外で広く評価されている。本展では、同館が所蔵する香川の歴史・美術・民俗に関する膨大な資料や情報などから、独自の視点でモノ・コトに着目し、それらから触発され生み出した作品や実物の資料を組み合わせた展示が行われる予定だ。
会場:香川県立ミュージアム
会期:8月9日〜10月13日
25歳で世を去った画家オーブリー・ビアズリーは、ろうそくの光をたよりに、精緻な線描や大胆な白と黒の色面からなる、きわめて洗練された作品を描き続けた。本展は、19世紀末の欧米を騒然とさせたビアズリーの歩みをたどる、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)との共同企画。初期から晩年までの挿絵や希少な直筆の素描に加え、彩色されたポスターや同時代の装飾など、約200点を通じてビアズリーの芸術を見る。11月からは高知県立美術館にも巡回予定(11月1日~2026年1月18日)。今春、東京の三菱一号館美術館で開催された本展のレポートはこちら。
会場:久留米市美術館
会期:5月24日〜8月31日
開館20周年と被爆80年という節目を迎える長崎県美術館による、戦争をテーマとした特別展。スペイン美術を標榜する同館は、収蔵するフランシスコ・デ・ゴヤの版画集『戦争の惨禍』を中心に据え、戦争の真の姿とその本質を問い直す。プラド美術館からゴヤの油彩画、ソフィア王妃芸術センターからスペイン内戦期に制作されたピカソの版画が出品されるほか、国内美術館が所蔵する戦争・原爆関連作品が一堂に会する。
会場:長崎県美術館
会期:7月19日〜9月7日
手塚治虫による医療マンガの金字塔『ブラック・ジャック』。同作の過去最大規模の展覧会である本展では、500点以上の原稿に加え、連載当時の『週刊少年チャンピオン』や1970年代に発行された単行本、200以上のエピソードの直筆原稿が展示される。また、本作が描かれた時代に影響を受けた作品や、制作当時の関係資料、誕生秘話が解き明かされる証言映像なども多数紹介される。
会場:沖縄県立博物館・美術館
会期:7月18日〜9月15日